科学技術イノベーション コンピュータ万能でよいか

内閣府が主導する「総合科学技術・イノベーション会議」で、首相に答申した「第5期科学技術基本計画」が1月22日に閣議決定された。政府は計画目的に経済再生、人口減少や少子高齢化、地球環境問題などの難題克服を掲げる。その主眼は、直面する経済再生のために、科学技術イノベーションを産業化し、活用することにある。

同基本計画は、科学技術基本法に基づき、政府が策定する10年先を見通した5年間(平成28~32年度)の科学技術を振興する総合的な計画である。日本の科学技術の現状について、ICTの進化などにより、社会・経済の構造に「大変革時代」が到来したとし、国内外の課題が増大、複雑化する中で、科学技術イノベーション推進の必要性が増していると強調する。

また科学技術基本計画の過去20年間の実績として、研究開発環境の着実な整備、LEDやiPS細胞などのノーベル賞受賞のような成果を上げる一方で、国際的論文の質・量低下など科学技術の「基盤的な力」の弱体化、政府の研究開発投資の伸び停滞などを指摘する。

政府はこの基本計画に、(1)未来の産業創造(2)経済社会的な課題への対応(3)基盤的な力の強化(4)人材・知・資金の好循環システム――の構築の4本柱を据え、あらゆる人が質の高いサービスを受け、生き生きと暮らせる「超スマート社会」を、世界に先駆けて実現すると意気込む。

「超スマート社会」は、コンピュータネットワーク上に作られた仮想的空間のサイバー空間と、現実社会とが高度に融合した情報化社会に次ぐ近未来社会をいう。近未来社会の構築には、ロボット、センサー、バイオテクノロジー、素材、ナノテクノロジーや、インターネットにさまざまな機器をつなげる技術、ビッグデータ解析などの基盤技術を、産官学・関係省庁が連携して開発することは避けられない。

このような科学技術イノベーションを創出する産学官の連携として、同基本計画は、産業界の人材・知・資金を投入した本格的な連携、大学などの経営システム改革、国立研究開発法人の橋渡し機能の強化などを打ち出した。人材面からは若手研究者の任期無しのポスト拡充、女性研究者の新規採用割合の増加などを盛り込んでいる。

折しも本紙の元旦号に、次期学習指導要領の改訂に向けて「学力とは生活する力」と題する新任の馳浩文科相のインタビュ―記事が掲載された。中のページで、改訂に取り組む同省教育課程部会の総則・評価特別部会と3ワーキンググループの委員による課題と見通しが紹介されて興味深い。

これまでの日本の教育課程は、どちらかといえば、既成の固まった知識を学年ごとに学習させ、ICTをはじめ、急激な科学技術や社会の状況変化に対応が遅れていた。

同特別部会の鈴木秀幸委員は「知識そのものを生みだしたり、従来なかった問題や課題にも対処したりできるような能力や技能、資質を育成することが必要」と指摘。その上で、今までの「学習内容中心のカリキュラム」構成に、このような「プロセス中心のカリキュラム」構成を、一部導入するよう提唱している。

一方、コンピュータ万能のように映る科学技術イノベーションに、日本科学未来館の小澤淳コミュニケーション専門主任が、同元旦号の特集「科学技術の近未来」で、「コンピュータにできない創造性や芸術性、意思決定などは、やはり人間でなければ発揮できない」と言っているのは、一顧に値する。

関連記事