組体操の是非 きちんとした指導行政を望む

運動会や体育祭などの目玉の1つ、組体操の「人間ピラミッド」の是非をめぐり、論争が再燃している。教育関係者からは、「児童生徒の安全確保を優先させる上で、廃止すべきだ」「人間の体を用いて行う見事な集団芸術で、存続すべきだ」のほぼ二分した意見が出され、混乱状況にあるのが現状だ。

日本スポーツ振興センターによると、小・中学校の組体操による事故は、年間8500件以上に達する。これを児童生徒1万人当たりのけが人に換算すると、兵庫県が19・9人でトップ、続いて福岡県14・7人、大阪府14・2人、三重県13・6人、鳥取県13・2人の順だ。

その象徴的な事故は、昨年9月、大阪府八尾市の市立中学校で行われた体育祭で起きた。10段の高層「人間ピラミッド」が完成間近で崩れ、1年生男子が右腕を骨折し、5人が軽いけがを負った。

組体操については、教育社会学者で学校リスク研究所を主宰する内田良名古屋大大学院准教授が一昨年5月に、ヤフーニュースに投稿した「緊急提言」が、すでに大きな論争に発展していた。投稿では、学校体育の各種目の中でも、高層の組体操の重大事故が多く、しかも増加傾向にある現状を指摘。学習指導要領に組体操の記載がなく、訴訟リスクもある実態から、子どものためにも、先生のためにも、組体操は「やめたほうがよい」と提言した。

この記事へのコメントは、はっきり賛否両論に分かれた。「絆うんぬんを言っている人もいるけれど、別にこれで深まったとかの記憶はない」「運動神経と体力の双方が不十分な場合、危険極まりない」と否定的な意見がある一方、「組体操の練習自体、体力をつける意味があるし、ピラミッドは組体操の中でもできたときの達成感はすごい」「そのうち、あれも危険だからダメ。これも危険だからダメ。ということになって、何もできなくなりそう」と継続を支持する意見も多かった。

文科省の指導の在り方も、教育的意義か安全確保かで「揺れている」のも確かだ。

この問題に強い関心を寄せている義家弘介文科副大臣は、東京新聞のインタビューで、「事故が起こって問題になったからと上から目線で何段と切るのは、指導上は不幸なことだ」「事故が起きているのは組体操だけではない。柔道、剣道などあらゆるところに規制を出さなければいけなくなる。文科省ができるのは指導・助言だけ。教委の判断で行うべきだ」などと述べ、主に教育的な意義を強調する。

これに対して、下村博文前文科相は在任中の記者会見で、5段、6段の自らの怖い体験を話し、「なんでこんな経験をしなければならないのか。どういう意義があるのか」と指摘、安全面から特に高層の組体操の実施には消極的だった。

文科省の指導に「揺らぎ」が見られるためか、都道府県教委側も、実施にばらつきがみられる。安全面を危惧している市町村教委は実施に積極的とはいえず、その判断を各学校に委ねる状況もあるという。

このように、高層の組体操の問題で、学校現場に混乱を招いているのは、組体操に対する指導行政が確立せず、実施するかどうかを各教委や各学校の裁量に任せていることに原因があるのではないか。

この際、文科省は、組体操の指導の在り方を練り直し、教育的意義と安全対策をきちんと位置付けた上で実施するかどうかの判断を求めるべきではないか。単に二者択一の問題ではないと考える。

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