義務教育充実図る文教予算 一人ひとりに学力の保障を

文教関連予算、特に教職員定数をめぐっては、文科省と財務省の厳しいせめぎ合いが毎年行われている。平成28年度の文教関連予算では、教職員定数の改善に向けた措置は財務省の児童生徒数の減少を理由にした教職員の削減の主張に押し切られ、法定の定数外に若干の加配教員の増員が認められるに留まった。

全国の小・中学校長の組織である校長会は、小・中学校の当面する課題の解消と現状の改善、特に生徒指導と授業の一層の充実を図るために、義務教育諸学校における教職員の定数改善を、長年にわたって国に強く要望している。

「一億総活躍社会」を目指すためには、義務教育における教育の充実を図ることが何より重要であるとは万人が認めている。しかし、義務教育の現場が当面している課題はあまりにも多い。

児童生徒間に学力格差が生じていることは、文科省の全国学力・学習状況調査の結果からも読み取れる。確かな学力が十分に身に付いていない児童生徒の背景には、経済力の低下、家族関係の歪みなどによって小学校に入学する前に必要とする家庭での教育が疎かになっている点が挙げられる。確かな学力を育むには、基本的な生活習慣や対人関係能力を身に付けていることが重要である。

貧困家庭や父子家庭・母子家庭、さらに要保護児童生徒数は増えつつあり、小・中学校のどのクラスにも当該する児童生徒は複数いる。基本的生活習慣を身に付けず、対人関係をうまく取れない児童生徒がクラスに複数いると、学級経営や教科指導で教員の負担は大変重くなり、教員の多忙感、疲労感を募らせる要因となる。

さらに、注意欠陥・多動性障害など障害のある児童生徒も通常の学級で学習していおり、その数は年々増えている。また地域によって差異はあるものの、日本語を十分に身に付けていない、日本の生活に適応できない児童生徒も確実に増えているが、学校現場には対応できる環境条件が整っていない。こうした状況の中で学校は、対応に最大の努力をしているが、校内の人的体制は極限状態にある。

財務省は「費用対効果」を論拠として教員定数改善を認めようとしないが、スクール・カウンセラーやスクール・ソーシャル・ワーカーなど心理や福祉の専門職の配置には一定の理解を示している。専門職が学校現場に配置され、学校が当面している課題に対応するようになれば、教員は教育活動に専念できる。しかし、専門職は児童生徒の学力の保障には関われない。

学校教育の使命は児童生徒一人ひとりに確かな学力を育むことにある。教職員一人ひとりはこのことを強く念じている。

教職員がその使命を果たすためには、それなりの環境整備が欠かせない。学校教育を取り巻く社会的環境は、義務教育諸学校の教職員定数に関する規定制定当時とは大きく変化している。国の施策も変化に適切に対応したものとすべきである。

国は教育再生実行会議を立ち上げ、学校教育の改善・充実を図るための提言を矢継ぎ早に示し、具体的な施策に取り組んでおり、「学びの力で地方創生」のスローガンも掲げられている。

中教審は、現代社会の変化に対応した学校教育の実現を図るための新しい学習指導要領に向けた取り組みを始めている。児童生徒一人ひとりに確かな学力を身に付けることを保障するためには、文教関連予算の在り方の見直しを含めた教育再生に国を挙げての取り組みが求められる。

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