教育振興基本計画 優先順位をつけた具体的方策を

かつては多くの国から「日本の初等中等教育の水準は世界一」などといった賛辞を受けたことがある。それが現状はどうか。児童生徒の自己肯定感や主体的に学習に取り組む態度、社会参画への意識などが国際的にみても相対的に低いなどの調査結果もあり、果たして〝世界に誇れる初中教育〟と胸を張れるだろうか。

現状に危機感を抱いた政府は、平成25年6月に第2期教育振興基本計画(平成25年度~29年度、教育基本法に基づき策定)を閣議決定。初中教育に対しては「今後5年間に実施すべき教育上の方策」として、4つの基本的方向性に基づく8つの成果目標と30の基本施策を掲げた。

これを受け、中教審初等中等教育分科会(小川正人分科会長)では3月8日、同基本計画をフォローアップする会合を開き、計画の8つの成果目標のうち、「特に関係が深い」と考えられる4つの成果目標の現状と課題を審議した。4つの成果目標とは、(1)「生きる力」の確実な育成(2)新たな価値を主導・創造する人材、グローバル人材等の養成(3)意欲ある全ての者への学習機会の確保(4)安全・安心な教育研究環境の確保――である。

これらの成果目標のうち、最も多くのページを割いているのは、(1)の「『生きる力』の確実な育成(幼稚園~高校)」。「生涯にわたる学習の基礎となる『自ら考え、行動する力』などを確実につける」ことを目指し、「国際的な学力調査でトップレベルに」「いじめ、不登校、高校中退者の状況改善」などを掲げ、具体的には、道徳教育の推進、教員の資質能力の向上などをあげている。

(2)の「グローバル人材の養成」では、「英語力の目標を達成した中高生の英語教員の割合増加」「日本人の海外留学者数・外国人留学者数の増加」などを掲げ、具体的には、高校段階における早期卒業制度の検討などをあげている。

(3)の「意欲ある全ての者への学習機会の確保」では、「家庭の経済状況などが学力に与える影響の改善など」を掲げ、具体的には、低所得者世帯の高校生等の就学援助の充実、挫折や困難を抱えた若者の学び直しの機会の充実などをあげている。

(4)の「安全・安心な教育研究環境の確保」では、「学校施設の耐震化率の向上」などを掲げ、具体的には、防災教育など学校安全教育の推進などをあげている。

以上、4つの成果目標による各種施策を総花的に紹介したわけだが、これらの施策を並行して推進することは、財政面などの面で実効性のある果実は期待できない。同初中教育分科会は、重点的な施策の優先順位を設定し、具体策を講じる必要がある。

例えば、今日の初中教育の最大の懸案事項となっている「いじめ」「不登校」問題への対応である。同基本計画による具体的方策では、「いじめや暴力行為などを未然に防ぐため、道徳教育、人権教育、体験活動などの推進、非行防止教室の開催などの取り組みを促進する」「問題行動を起こす児童生徒に対しては、出席停止や懲戒などの措置も含め毅然とした指導を促す」などの施策を打ち出している。ただ、これでは従来の施策とそれほど変わらず、抜本的な解決策にはほど遠いものがある。

いじめによる自殺事案が解消されない中で、「人間の命」の軽さが問題視されている状況がある。それを克服するのは「教育の力」であるはずだ。「人間の命」の重さを最優先するような方策を中教審のフォローアップ会合では期待したい。

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