子どもの健康指標改善 革新的な科学技術戦略に課題

低迷する日本の経済を再生するため、政府の「科学技術イノベーション(革新)総合戦略~新次元日本創造への挑戦」が、新年度から各省が分担してスタートする。

この政策は「第5期科学技術基本計画」に基づいて、平成28年度から5年間実施される。そのねらいは、日本の得意分野でもある、革新的な科学技術の研究開発の成果を産業化し、経済再生のエンジンにすることにある。同総合戦略は、産官学の連携から、大学、国立研究機関の改革、研究者増強、地域社会との連携など、盛りだくさんだ。戦略の推進に弾みをつけるには、奨励イベントを各地で開催して産官学の連携を強化し、世論を喚起することが欠かせない。

文科省は、筑波大学に委託し、昨年11月に同学で「未来ロボット工学フォーラム」を開催し、好評だった。今年は3月中旬、同学でイノベーションとエコシステム(生態系)の構築を関連付けた「健康長寿Biz・Seeds」と題する奨励イベント(フォーラム)を開催した。

この奨励イベントは、つくば地域でイノベーションによるエコシステム構築の啓発準備をして、将来的に全国に展開可能なモデルづくりを目指す。
同イベントでは、「血液バイオマーカー検査による認知症・肝疾患の予防医療事業」(内田和彦筑波大准教授)をはじめ、「携帯型の血液透析代替器と、貼るがん治療を実現するバイオマテリアル」(荏原充宏・物質材料研究機構/主任研究員)、さらに「藻類バイオマス・オイルの大量生産技術採算ラインへ」(渡邉信同大教授)などの有意義な研究発表があった。

このイベントが対象とする世代は、どちらかといえば、比較的年齢の高い層が中心だった。

総合戦略は、とかく科学技術とその産業化の進展に目を奪われがちである。だが、同戦略は「2030年に実現すべき経済社会の姿」として、「次世代を担う子どもの健やかな成長」も掲げている。

見落とされかねない課題のかなめは、子どもの(1)健康指標改善(2)健康に影響を与える環境要因の解明だ。この取り組みでは、まず子どもの健康、難治性の慢性疾患、小児の病死原因1位のがんなどへの医療研究を推進し、健康に影響を及ぼす疾病や環境要因の解明をする。そのうえで、適切な教育を通じて、子どもの健康や疾病予防に配慮した社会を実現するとしている。

このような社会実現の具体策として総合戦略は、子どもの健康と環境に関する全国調査、健やか親子21、小児慢性特定疾患の治療研究事業のほか、学校保健の各種施策、周産期医療対策、がん対策推進基本計画、2030年、平成42年までの成果目標、10代の自殺率の低減、児童生徒の肥満児の割合など、子どもの健康指標改善を掲げる。

日本で、小児の病死原因で最も多いのはがんだ。成人と比べ、小児がんは治療後の経過が長く、晩期合併症や発育、教育などに影響する。小児がんの年間発症患者数は2千~2500人。だが、小児がんを扱う医療機関は200程度で、必ずしも適切な医療を受けていない。2012年6月に閣議決定された「がん対策推進基本計画」は、小児がんの拠点病院の整備と、全国の中核的な機関の整備を開始することを目標に定めたが、対応が遅れている。

文科省と厚労省は、「科学技術イノベーション(革新)総合戦略」の、これら課題の実現を置き去りにしないでもらいたい。

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