貧困に伴う教育の格差解消 中教審は強力で整合性ある答申を

中教審は5月17日に開いた教育振興基本計画部会(北山禎介部会長)の会合で、懸案となっていた「子どもの貧困」など教育格差の問題解決に向けて本格的な審議に入った。1カ月ほど前の4月18日、馳浩文科相からの諮問、2030年以降の「第3次教育振興基本計画の策定」を受けての検討だ。

その「子どもの貧困」の実態はどのようなものか。よく引き合いに出されるOECDの「貧困率の国際比較」によると、日本の「相対的貧困率」は、OECD34カ国中29位の水準だ。「子どもの貧困率」は、34カ国中25位であるが、大人が1人の「子どもがいる世帯」では33位である。

ここでいう「相対的な貧困率」とは、「クラスの平均的な子と比べて『貧しい』」という状況で、厚労省のデータによると、最新の平成25年調査で「相対的貧困率」は全体で16.1%にも達している。

ある専門家は「日本は子どもの貧困大国で、子どもの6人に1人が貧困に該当する。貧困はあくまでも相対的なもので、その国で文化的な暮らしを送っていくのに必要な収入がないのを意味すると考える人もいるだろう。ここでいう貧困とは、相対的な貧困。クラスの平均的な子と比べて『貧しい子』が増えているという話である」と説明している。

その原因は、失業、非正規雇用、離婚による1人親世帯の増加など経済的な事情のほかに、虐待など複合的な問題が絡まっている場合が多いという。

一方、家庭の経済格差が子どもの学力格差・教育格差を生む原因になっている。平成25年度の全国学力・学習状況調査の結果を分析すると、世帯収入の多寡で正答率に約20ポイントの開きが生じていた。

「子どもの貧困」による社会的な損出も大きく、日本財団ほかが発行した損出推計(昨年12月)によると、「子どもの貧困対策を行わず現状のまま放置した場合、1学年あたり約2.9兆円の経済損出が発生し、政府の財政負担は約1.1兆円増加するとの推計結果もある」との分析結果もある。国家財政の問題からも看過できない大問題といえよう。

中教審の議論では、現状分析について多くの意見が出された。委員からは、「母子家庭に貧困問題が集中している。このため、教育よりも家庭の生活に力を入れざるを得なくなっている」といった声や、「生活保護家庭の多い地域の子どもの中に、『自分もいずれは保護家庭の子になる』と自嘲的に発言するケースもあり、深刻だ」などの意見もあった。

これに対して、解決策としては「学力の二極化が進んでいる。学び直しのシステムが必要だ」「すべて平等な教育に限界がある。多様な教育を用意する必要がある」「生涯学習社会の推進で解消できないか」など、総論的な意見が多かった。中には、「教育委員会に任せていては解決しない。区長(知事)部局全体で戦略を立てて取り組む必要がある」「スクールソーシャルワーカーの役割に期待する」との具体的な提案があった。

馳大臣は諮問の中で、「子どもの貧困に現れる格差の固定化を食い止め、子どもたちの誰もが頑張れば、夢を紡いでいくことができる社会が実現する必要がある。そのために教育の果たすべき役割は大きい」と述べている。

「貧困」に伴う教育の格差解消のためにも中教審は、強力で整合性のある答申を作り上げてほしい。

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