質の高い職業人育成へ 個人の能力開花と課題解決社会で

今後、国において必要な制度改正や施策についての詳細な検討、実施が図られることにより、個人の能力と可能性を開花させ、全員参加による課題解決社会を実現し、活力のあふれる持続可能な社会となることを期待する――。この文章は、5月30日の中教審総会で北山禎介会長から馳浩文科大臣に答申した「個人の能力と可能性を開花させ、全員参加による課題解決社会を実現するための教育の多様化と質保証の在り方について」の冒頭部分である。

「個人の能力の開花」と「全員参加の課題解決社会の実現」という、一見、相矛盾する教育の営みが「活力ある持続可能な社会」の構築につながれば、今回の答申の果たす役割は大きく、今後の文教行政の舵取りが注目される。

中教審が当時の下村博文文科大臣から諮問を受けたのは平成27年4月で、その審議事項は、第1部が「社会・経済の変化に伴う人材需要に即応した質の高い職業人の育成」、第2部が「生涯を通じた学びによる可能性の拡大、自己実現及び社会貢献・地域課題解決に向けた環境整備」である。

第1部の内容は、(1)21世紀を生きる職業人を取り巻く状況と今後の職業人材養成(2)高等教育における職業人養成の現状と課題(3)新たな高等教育機関の制度化の方向性(4)新たな高等教育機関の制度設計――からなる。この中で、「今後の職業人材養成」(職業教育)や「高等教育機関の制度設計」については、数多くの具体策を提案しているのが注目される。

特に、「今後の職業人材養成」については、「わが国の経済が今後ともその競争力を維持し、向上させていくためには、成長分野へのシフトを円滑に進めるとともに、個々の職業人の労働生産性を高め、事業の現場においても、商品・サービスの質向上、グローバル化への対応など、様々な変化への対応等を推進していくことが不可欠である」とした上で、「これからの職業人材養成においては、とりわけ変化への対応を求められる中で、事業の現場の中核を担い、現場レベルの改善や革新(イノベーション)を牽引していける人材の養成強化を図ることが課題となる。こうした人材が事業活動の最前線に立ち、新規事業への進出や事業の海外展開などに関しても、中核的な役割を果たしていくようになることが期待される」と指摘している。

さらに、小・中・高校など、高等教育機関以外の関係者にとって関心の高い、「今後の学校における職業教育」については、次のように述べている。

「学校における職業教育は、座学や理論の教育のみにとどまらず、産業界などと連携して(1)専門分野における高度で実践的な専門性を身に付けると同時に、(2)専門の中で閉じることなく、変化に対応する能力や生涯にわたり学び続けるための力(基礎的・汎用的能力や教養など)を備えた人材の層を厚くしていくことが求められており、それらに対応した教育の仕組みが必要となっている。しかも、そうした教育機会が入職前の若者や現職の職業人をはじめ働く人々の様々なライフステージに応じて、適切に提供されるようにすることが重要である」

今後の職業教育の在り方を考える上で、示唆に富んだ提言といえよう。次期学習指導要領に反映できるよう期待したい。

なお、第2部の「生涯学習による可能性の拡大、自己実現及び社会貢献・地域課題解決に向けた環境整備について」は、検定試験の質の向上などに言及している。

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