「考える道徳」教育への転換 特別活動との関連を1つのヒントに

「特別の教科 道徳」(道徳科)は、昨年度から一部または全部の実施が可能となり、小学校では平成30年度から、中学校では31年度から全面実施となる。

その中身は、従来の「道徳の時間」での道徳教育とは大きく異なる。討論しながら課題の解決策を探る「課題解決型学習」を取り入れ、「教材を読む道徳」から「考える道徳」への転換を図る点が、大きな特色だ。道徳教育の在り方などを検討するワーキンググループの名称に、わざわざ「考える道徳への転換に向けた」とネーミングしたところにも、文科省側の強い意向が働いている。

「考える道徳」に対する解釈と対応については、5月27日の初会合で、何人かの委員から意見が表明されている。

「先生にとっては、道徳の授業をどう変えていくかが一番の関心事だ。考え、議論する道徳への転換は、キーワードとしては学校や先生方の中に浸透しているが、具体的にどのような授業をしていけばよいのかまでは浸透していない」

「考える道徳、議論する道徳といったときに、考えるとはどういうことか。議論するとは何をいい、またどういう可能性をもった言葉として使っているのかと自覚した上で議論しなければならない」

「議論する道徳とは、道徳的価値を二項対立的に議論するようなものではなく、むしろ原理追究的な議論や体験、複雑な事象など多くの道徳的価値を含む問題を議論することである」

「現代社会の中での、善悪の判断ができない問題を扱う場合、正解がなく、個人の価値観によって選択し、決定していかなければならない社会的な問題の議論も重要ではないか。その際、例えば正答のない問題に対して、どのような課題や問題が発生するかといった問い方も可能ではないか」

「資料を読んで登場人物の思いを問う授業展開が行われてきたのが、現場の主流ではないか。ある段階までは、こうした授業を通して主人公や登場人物の思いに共感しながら、そこに道徳的心情を考えるのは、重要な視点であるが、なぜこのような行動に出たのか、客観的、批判的な視点での問いかけも必要ではないか」

このように各委員の見解が定まっているとはいえず、今後の審議に委ねられる状況である。だが、ワーキンググループではその解決策の1つとして、高校での「中核的指導場面」とされている「特別活動」と「道徳教育」との関連を図るのを提案し、次の「論点」を掲げて説明している。

「例えば、話し合いにより、合意や結論を出すことを目的とせず、道徳的諸価値についての理解を基に、自己を見つめ、物事を多面的・多角的に考え、自己(人間として)の生き方についての理解を深めることを通じて道徳性を養う道徳科の学習と、学級・学校の現実に照らし、話し合いを通じて互いのよさを生かしながら個人の意思決定や集団としての合意形成を図る特別活動を学校や児童生徒の実情に応じて関連させながら道徳性を育てるという関係を改めて明らかにすべきではないか」

参考にしたい提案ではないか。さらに、有効な具体案を提示してもらいたい。

日本の道徳教育はかつて、徳目主義による教師の一方的な指導、また左右両翼のイデオロギーに偏した教育が行われてきた時期があった。次期学習指導要領に向けた道程の中で、これらの問題性のある道徳教育から脱し、名実ともに「考える道徳」に転換するのを、強く願いたい。

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