「2030年以降」の教育 教育再生実行会議提言・倉敷宣言踏まえ

「2030年以降」の社会の変化を見据えた教育政策はどう展開すべきなのか――との議論が、中教審など文科省の各審議機関で開始された。

この問題の重要性を認識した文科省は、大臣諮問という形で、2018年から5年計画でスタートする第3期教育振興基本計画の在り方を審議する際、「2030年以降の社会の変化を見据えた教育政策の在り方」の検討を踏まえるよう要請した経緯がある(平成28年4月18日)。

これを受け、中教審の教育振興基本計画部会は6月30日の会合で「第3期教育振興基本計画の策定に向けた当面の主な検討事項」を、次の3つの柱を掲げて審議することになった。

検討事項(1)=「2030年以降の社会の変化を見据えた教育の目指すべき姿」。その社会の姿をどう捉えるか。またそのような社会の姿を見据え、未来を生き抜く自立した人間を育成するために教育の目指すべき姿をどう考えるか(主として技術革新やグローバル化の進展に伴う社会システムなどの変化への対応。主として子どもの貧困など格差への対応)。

検討事項(2)=「(1)を踏まえた教育政策の基本的な方針、目指すべき方向性」。2030年以降の社会の姿を見据え、未来を生き抜く自立した人間を育成するためにあらゆる教育段階を通じてどのような基本的な方針のもとに教育政策を進めるべきか。

検討事項(3)=「教育投資の効果や必要性を社会に対して示すための方策」。より効果的・効率的な教育政策の立案につなげるため、第3期教育振興基本計画の検証改善サイクルをどのように確立すべきか。また教育再生実行会議提言やG7倉敷教育大臣会合の成果文書などを踏まえ、各種教育施策の効果を専門的・多角的に分析・検証するために必要なデータ・情報の体系的整備や実証的な研究の充実を含めた総合的な体制の在り方をどのように確立すべきか。

以上、3つの検討課題は、それぞれが国家的なプロジェクト並みの重要課題ばかりである。特に、検討事項(3)でふれている教育再生実行会議第9次提言(5月20日)や、G7倉敷教育大臣会合の成果文書(5月15日)は「2030年以降」の教育の在り方を検討する上で参考になろう。

教育再生実行会議第9次提言は「多様な個性が生かされる教育の実現」を目指すもので、「発達障害など障害のある子どもへの教育」「不登校などの子どもへの教育」「学力差に応じたきめ細かい教育」「特に優れた能力をさらに伸ばす教育、リーダーシップ教育」「日本語能力が十分でない子どもたちへの教育」「家庭の経済状況に左右されない教育機会の保障」などを挙げている。

一方、G7倉敷教育大臣会合は、倉敷宣言の中で、「教育の果たすべき新たな役割」として、特に「人間の尊厳を損なうあらゆる暴力、差別を阻止し、共生社会を実現するため、共通価値(生命の尊重、自由、寛容、民主主義、多元的共生、人権の尊重など)に基づいて教育を通じたシチズンシップの育成、教育によって文化間の対話、道徳心の養成が必要」などと強調している。

「2030年以降」の社会をどのように想定しようとも、教育の普遍的な価値を損なう政策を導き出してはならない。あくまでも「個人の尊厳を重んじ、真理と正義を希求し、公正の精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成を期する」という教育基本法の精神を堅持する結論を導き出してほしいものである。

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