主権者教育の今後 社会の変化によらず必要

平成27年に選挙権年齢を18歳以上とする改正公職選挙法が成立し、平成28年7月に行われた参議院議員選挙から施行された。総務省の行った抽出調査によると、18歳の投票率は51.17%、19歳では39.66%となった。前回の第23回参議院議員選挙における20~24歳の投票率31.18%と比較しても高い投票率となっている。

今後は、国政選挙に限らず、自治体の首長や議員の選挙、最高裁裁判官の国民審査や地方自治法に定められた直接請求などにも参加していくことになる。これらの選挙はそれぞれの種別ごとに課題や争点が異なり、新たに選挙権を得た18・19歳の有権者は、経験を積みながら考え方などを学んでいくことになる。

昨年以降、公職選挙法の改正を受けて学校や自治体における主権者教育や啓発活動が各地で活発に行われてきた。今後は、これまでの取り組みを振り返りながら、主権者教育をどのように位置付け、展開していけばよいのかを考える必要がある。

一つは、主権者教育のねらいや範囲、内容について吟味検討することである。参考になるのは、平成23年12月に報告された「常時啓発事業の在り方等研究会」の最終報告書である。

報告書では、現代に求められる新しい主権者像を「数多くの課題に対処し、適切な選択を行うためには、高い資質を持った主権者、すなわち、国や社会の問題を自分の問題として捉え、自ら考え、自ら判断し、行動していく主権者」としている。またキーワードとして「社会参加」と「政治的リテラシーの向上」を挙げている。やや包括的な捉え方であるが、今後はこの定義を手がかりに、さらに目標を具体化していくのが有効と考える。

第二は、カリキュラムやプログラムの方向性の検討である。教育活動を計画的に展開し、成果を目指すためには、目標や内容、方法、評価の枠組みに収まるカリキュラムやプログラムが必要である。

現時点では、模擬投票も政策の比較検討も主権者教育の一部として実施されているが、どのような教育活動や取り扱いが主権者教育といえるのか、レーゾンデートルの模索が必要である。現在は選挙への関心の喚起と投票促進が課題とされているが、選択の在り方や結果に対する責任などについても考慮が必要である。

教育課程に適切に位置付け、計画的に展開していくには、目標や各教科等、学年における実施内容を関連づける全体計画が必要である。主権者教育については、全体計画を作成する取り組みとして教育活動に位置付けるのかどうかの判断が必要である。

また高校だけでなく、小・中学校における取り扱いをどうするのか、何をどの程度求めて、どこまで展開するのか、この点も重要な課題である。さらに、学校外の関連する諸団体との連携したプログラムの在り方も課題であろう。

最後に、主権者教育と将来における必要性や在り方についてである。現在は制度改正に伴って主権者教育が話題となっているが、これまでも消費者教育や環境教育、食育、防災教育等が時代や社会の要請の中で求められ、学校教育でも位置付けられてきた。若年層の低い投票率や選挙権の18歳への引き下げで注目されている主権者教育だが、賢明な選択ができる有為な市民、国民を育成するという点で主権者教育は、社会の変化にかかわらず必要な教育といえる。

主権者教育の取り組みを整理しながら、今後の在り方と方向性の検討が進められるのを期待したい。

関連記事