理工系人材育成の産学官会議 若者に新しい職場を開けるか

7月の参院選は、18、19歳の有権者が誕生して初の国政選挙となり、若者たちの責任が増した。彼らが社会人として活躍できる職場の確保は大丈夫なのか。参院選の直後に開かれた文科、経産両省共催の「理工系人材育成の産学官円卓会議」から、職業選択の方向性が示された。

円卓会議は「産学官行動計画(案)」で、(1)国際競争を勝ち抜くため、科学技術イノベーション(革新)を担う理工系人材の質的充実と量的確保戦略に取り組む(2)10年後、20年後の新ビジネスや市場の誕生を念頭に、イノベーション創出人材の育成を推進する——と強調している。

理工系人材の育成は、政府が今年1月に策定した科学技術イノベーション推進により経済再生を図る「第5期科学技術基本計画」の4本柱の1つ「人材・知・資金の好循環システムの構築」で打ち出された。この構想は、4月の「第4次産業革命に向けた人材育成総合イニシアチブ」で、喫緊の課題として、ITの関わるAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)、ビッグデータ、セキュリティーなどの専門的な人材育成の確保が具体化されている。

「産学官行動計画(案)」は、(1)産業界のニーズと高等教育のマッチング方策、専門教育の充実(2)産業界における博士人材の活躍の促進方策(3)理工系人材の裾野拡大、初等中等教育の充実——の3計画で構成されている。

円卓会議では、産業界の求める人材ニーズのアンケートが、昨年初めに実施された。この調査は、産業界の53業種の第一線で働く22〜40歳の技術系約9800人、非技術系約2万4100人を対象にした。

このアンケートの分析結果から、産業界では情報技術分野や、今後の成長が期待される新分野で人材が不足していることが明らかになった。情報・ソフトウエア産業で働く技術系、非技術系とも、必要としている専門知識が共通して高いのはIT分野だ。

問題は、こうした結果が、大学などの研究室で学んだ内容と、現在の職務遂行で必要な専門知識との間に、どの程度のギャップが産業分野ごとにあるかである。

円卓会議の事務局は、そのギャップが社会全体に与えるインパクトとして計算し、技術系、非技術系を合わせて、特に「ソフトウエア、情報システム開発」分野でギャップが生じており、技術系のそれが著しく大きいと、指摘している。

政府は、不足する理工系人材の短期(2〜3年内)対応策として、産学官円卓会議の下に「人材需給ワーキンググループ」を設け、理工系人材の質的充実と量的確保の対応策を作る。産業界は、大学の理工系の関係者と「連絡組織」に参加し、企業が必要とする人材のニーズ具体化を始める。

「産学官行動計画(案)」を支える土台となる「理工系人材の裾野拡大、初等中等教育の充実」は、将来に欠かせない。

初等中等教育の理系科目を担当する教員を対象に、学びなおしの講座の開講が検討されている。産業界と連携して、理科、算数など理系科目で学ぶ内容が、実社会で役立っている現場体験もありそうだ。

理科教育では、実際の観察や実験などで探究心を養うことが大事だ。自分で実験装置を操作できる理科施設や設備の整備も必要だ。子どもは親や先生に学ぶ。中学・高校における進学の志望校、学科の選択、将来の進路指導。

その中で、理工系人材の育成はどのような役割を果たしていくのか、見守っていきたい。

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