養・採・研の一体的改革 指導主事の養・任・研も検討を

昨年12月、中教審答申「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について」が出された。そこでは、教育をめぐる時代の大きな転換点にある今、国際的に高い評価を受けているわが国の教員の強みを生かしつつ、教員の養成・採用・研修の一体的改革で、より質の高い教員並びに学校教育が可能になるとしている。しかし同答申は、こうした一体改革を妨げている要因が、日常業務の多忙化に見られる教員の非合理的な業務内容や若手教員を育てるミドルリーダー層の不足と指導体制といった条件整備上の課題にあるとしている。

一方、文科省の平成29年度概算要求が発表され、その中で教職員定数の改善として、発達障害等の児童生徒への「通級による指導」に必要な教員や小学校の外国語活動など専科指導のための教員、「チーム学校」における事務職員等の専門職員など3060人、65億円が計上されている。さらに、この先10年間を見通し、毎年ほぼ同じ数の増員を要望するという。そこには、発達障害等による通級指導や外国人児童生徒等に必要な教員などその年の状況に応じて加配する措置から対象児童生徒数に応じた基礎定数による措置への転換のための義務標準法の改正も盛り込まれている。ただしこれは、向こう10年間の児童生徒数の減少による教職員の自然減分4万5千人等を見込んでの数値である。ここ数年の財務省との折衝で、「本丸」である学級編制の標準数の改正までには至れない文科省の苦しい状況を理解すれば、苦肉の策ではあるが、その努力は評価したい。

ここで注意したいのは、この一体的改革は概算要求が全面的に通って成り立つ話である点である。多くの識者や現場の管理職が憂慮するように多忙極める現在の教員にこれ以上の研修時間を求めるのは難しい。資質能力の向上はおろか、こうした教員の実態を見て教員を希望する人材が減退するといった養成・採用段階での問題が生じる可能性も大いにある。それらを認識した上で文科省は、今後の概算要求等の折衝に臨んでもらいたい。向こう10年間を見据えた教職員定数の改善策は、まさにわが国の国家としての将来像を揺るがしかねない状況を秘めているといっても過言ではない。

このほか同答申では、一体的改革の一環として、大学等と教育委員会の連携・協働のための制度改革が提言されている。例えば、高度専門職業人としての教員の成長を支えるため、教員の育成指標を協働して作成するなど教員の育成方策が体系化されるのもその一つである。そこで、この提案の成否のカギを握るのが各都道府県や市町村教育委員会にいる指導主事だ。同答申は指導主事についてふれてはいないが、彼らは「学校における教育課程、学習指導その他学校教育に関する専門的事項に関する事務」(地教行法)全般にわたり直接学校に関わっていく重要なキーマンである。

指導主事は、他の行政職員と違い、何年かの教員生活の実績を評価され着任する例が多い。まさに教員にとっては学習指導や生徒指導の頼もしきスペシャリストであり、管理職にとっては学校経営のよきアドバイザーでもある。また指導主事は、正確には「充て指導主事」と呼ばれ、教員定数の中から任用される。しかし、最近の管理職志望者の減少に伴い、指導主事の任用・育成にも苦労する自治体は多い。教員の養成・採用・研修の一体的改革の提言が出た機会に、指導主事の養成・任用・研修についても、国・都道府県とが一体化した改革案を検討する価値は十分にある。

あなたへのお薦め

 
特集