不易と流行を考える “元”は一つという視点も

不易と流行という言葉がある。芭蕉が俳論に関して「不易を知らざれば基立ちがたく、流行を知らざれば風新たならず」と述べたのに由来するとされる。物事の変わらない本質を知らなければ基礎が確立せず、時代に合わせて変えていくことがないと、新たな進展がないとの意味であろうか。

「生きる力」の理念を提起した平成8年の中教審答申では、「『時代を超えて変わらない価値のあるもの』(不易)をしっかりと身に付けると同時に、『時代の変化とともに変えていく必要があるもの』(流行)に柔軟に対応していくこともまた、教育に課せられた課題である」とした。

振り返ってみると、臨教審答申を受け、平成元年の学習指導要領では、自己教育力の育成の立場から、「自ら学ぶ意欲」「社会の変化に主体的に対応できる能力の育成」を重視し、基礎・基本の育成と個性を生かす教育の充実を提起した。この「意欲」や「主体性」の重視は、その後の指導要録の改訂に伴って「新しい学力観」として受け止められることになる。

平成10・11年の改訂では、「生きる力」の理念の下、「自ら学び、自ら考える力の育成」などが掲げられ、総合的な学習の時間が創設された。平成20、21年の改訂では、確かな学力を目指し、教えることと学ぶこととの関係が問われるとともに、学力の3要素が明確にされ、言語活動の充実等が具体化された。

これらの過程を通じて授業時数や履修方法等に変化は見られたが、流れとして共通しているのは、学習意欲や主体性、見方や考え方の重視という点である。また体験的活動の重視も変わらず引き継がれている。

翻って、これまでの学習指導要領の流れから次期学習指導要領を捉えると、どのように不易と流行が見えてくるであろうか。

学習指導要領の具体的な内容は来年にならないと確認できないが、現時点では教育課程の構造化やカリキュラム・マネジメント、主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)、教科の見方・考え方の明確化等が特色として指摘できる。

教育課程の構造化とカリキュラム・マネジメントについて、この考え方は既に総合的な学習の時間の新設によって、多くの学校が苦心してきたところである。総合的な学習の時間においては、各教科等で身に付けた知識や技能等を関連付け、総合的に働くことが求められたからである。

道徳教育や総合的な学習の時間の全体計画の作成は、教育課程の構造化とカリキュラム・マネジメントの重要な一端を担ってきたといえる。また学校評価の取り組み場面でも、カリキュラム・マネジメントが重要な要素として課題とされてきた。

主体的・対話的で深い学びについてもその質的な違いはあるが、平成元年の自己教育力の育成を重視した学力観、平成10年の「自ら学び、自ら考える力」に通じる面を持っている。平成20、21年の改訂で「自ら学び、自ら考える力」は総則から姿を消したが、学力観・学習観の基調として継承されていると見ることができる。

一方、臨教審が提起した個性化の原理を受けた、選択履修幅の拡大の流れは、平成20、21年改訂で再検討されることになった。教育課程の仕組みとしての共通性と多様性をどのように整理していくかは、さらに検討の余地を残していると考える。

不易と流行を分けて捉え、整理するのも大切であるが、両者の”元”はつまるところ一つであるという視点から捉えることも必要であろう。

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