全国学力・学習状況調査 学力向上は教委と学校の英知で

9月28日に文科省が、今年度の全国学力・学習状況調査結果を公表した。本紙では識者2人による分析を、10月6日号に掲載した。調査開始の10年前に比べ、全体的にいわゆる学力の底上げが進んだ。これまで平均正答率で下位層にいた府県が校種・教科により上位層に躍進し、自治体の取り組みの成果が出たところもあった。一方で、毎年公表される都道府県別平均正答率の順位付けの弊害も指摘されている。

マスコミにも取り上げられた例を見ると、ある教委が子供向けに出した文書に自分の地域が全国最低レベルであるのを述べた上で「くやしくないか」と問いかけ「プライドを見せよう」と激励した例など、競争意識をあおって平均点を上げる取り組みを行う自治体・教委があり、4月には馳浩前文科相からも懸念が示された。

かつて、東京都内のある小学校で都の学力調査の際に校長自ら児童に誤答に気付かせるような「指さし」を行ったのが発覚し、学力調査結果の自治体別公表がもたらす弊害が話題になった。それ以降、行き過ぎた学校の取り組みについては自粛に向かったものと思われたが、前述の事例は、学校に対して学力向上対策の専門的な指導をすべき教委そのものが点数を上げるのに重点を置き、肝心の子供一人ひとりの学力向上の在り方を置き去りにした典型といえるだろう。

そこには、平成26年に改正された教育委員会制度が関係しているという識者もいる。この改正により、それまで教育問題に対し教委の中立性を尊重していた首長が教育総合会議等の場で意見を述べられるようになり、教委にとって大きな圧力になっているというのだ。その影響が前述の事例のような精神論による学力向上対策となってあらわれると識者は指摘する。

今回、これまで下位層にいた府県が校種・教科によって上位層に躍進し、その取り組みが話題となった。これらの取り組みに共通しているのは「家庭での学習時間の増加」「小学校でのつまずき対策」のほか、次期学習指導要領でキーワードとなる「主体的・対話的で深い学び」である。言い換えれば、現行の学習指導要領のもとで行われている言語活動を中心とした思考力・判断力・表現力の育成など「生きる力」の具現化である。

こうした成果を総じると、子供一人ひとりの実態に向き合い、子供の生活改善にまで踏み込んだ指導と、教師自身の授業改善を学校挙げて組織的に行っていることが見てとれる。教委や校長が強いリーダーシップを発揮し、家庭や地域に対しても連携・協力を図ったことも予想される。

次期学習指導要領では、「社会に開かれた教育課程」の理念のもと、子供たちが未来の創り手となるために求められる資質・能力を育んでいくために、「何ができるようになるか」「何を学ぶか」「どのように学ぶか」を組み立て、家庭・地域と連携・協働し子どもの姿を踏まえながら見直しを図るカリキュラム・マネジメントが学校に求められている。

そして、カリキュラム・マネジメントが成立する側面の一つとして「教育内容の質の向上に向けて、子供たちの姿や地域の現状に関する調査や各種データ等に基づき、教育課程を編成し、実施し、評価して改善を図る一連のPDCAサイクルを確立すること」(「審議のまとめ」)を提唱している。

学力向上は、精神論ではなく、教育の専門集団である教委と学校の英知にかかっていると、関係者は再認識すべきであろう。

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