教員の長時間労働 改革案を示し実行を

広告代理店大手の電通に勤務する女性新入社員の高橋まつりさん(当時24歳)が昨年12月に過労自殺し、労災と認定された事件がきっかけに、長時間労働の問題がにわかにクローズアップされている。この問題を重く見た厚労省は11月7日、複数の社員に違法な長時間労働をさせていた疑いが強まったとして、電通本社に労働基準法違反の疑いで家宅捜索に入った。長時間労働問題が、ついに強制捜査という事態にまで発展した。

教員の世界にも、長時間労働は、解決できずに手をこまぬいてきた実情がある。特に、部活動の指導を巡り、問題解決はおろか、さらに事態を悪化させてきたといっても過言ではない。

その閉塞状況の中で、大きな風穴を開ける動きがあった。安倍晋三首相が10月28日に、首相官邸で開かれた政府の教育再生実行会議で、教員の長時間労働に言及し、「学校教育においても、教師の長時間労働が顕在化している。教師のみが部活動を担うのには限界があり、今の部活の在り方については見直しの必要がある」との見解を示した。

一国の首相が教員の長時間労働や部活動の在り方にまで言及するのは、これまでになかったであろう。それだけに、安倍首相の発言を重く受け止める必要がある。

教員の長時間労働について、その詳細な実態が、今年6月に発行された雑誌『季刊教育法』に発表された。名古屋市の新任教員に関するデータで、その1年間の勤務状況を見ると、時間外労働時間(残業時間)が月平均で90時間に達しているほか、新任教員は8月を除く全ての月で、時間外労働の平均が「過労死ライン」(月80時間)を超えているという。

内田良名古屋大学大学院准教授は、これらの実態を示した上で、「忘れてならないのは、平日の時間外労働については、残業代はいっさい支払われないということである。不払い労働で、過労死ラインを超える時間外労働が常態化している。重大な問題である」「総じて、若手の運動部顧問が中学校の中で最も多忙であると言える。教員の多忙を改善するためには、まずは若手教員、中でも運動部顧問の負担を軽減させることが最優先されるべきである」などと提案している。

教員の長時間労働の解決のためには、まず、文科省が「過労死ライン」を超す長時間労働の実態と打開策を示すのが先決である。

「中学校の教諭が部活動指導に従事する時間は、勤務日の場合は最も多くの時間が費やされている授業に次いで多く、また、週休日の場合は最も多くの時間が費やされており、勤務負担の増大の大きな要因となっている。特に週休日の振替が行われずに週休日に部活動指導に従事する場合は、さらにその勤務負担は大きくなる」

「中学校などの教諭の勤務時間を縮減し、勤務負担を軽減するためには、部活動指導の在り方について見直していくことが不可避である」

この文言は、文科省が平成18年の「教員勤務実態調査」の結果に基づいて示した「教員の勤務時間管理、時間外勤務、適切な処遇の在り方」に関する記述である。

それから10年ほどの歳月を費やしたが、事態はむしろ悪化をたどっている。大胆な改革案を示し、実行に移してほしい。首相が率先して、打開策を講じるよう促したにもかかわらず、何ら事態が進展しなければ、解決策は遠のくばかりである。

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