実利本位で閉塞感 気宇広大な授業で子供に夢を

夜空の空気が澄み、星々の輝きが一段と増した。宇宙へ羽ばたきたいと思う人がいるかもしれない。平和なはずの日本では、子供のいじめの認知件数が、昭和60年以来、最悪の22万4500件を超え、小学校では暴力行為が増えた。どうしたら、子供のいじめは少なくできるのだろうか。

宮沢賢治は名作「銀河鉄道の夜」で、父親が漁で不在、母親が病に倒れ、活版所で働きながら通学し、いじめられる孤独な少年を主人公にしている。祭りの夜、少年は友達の少年と銀河鉄道に乗り、全天を流れる天の川銀河にきらめく、星座の星々をめぐる旅にでる。道中で少年は乗車するさまざまな人々と出会い、その生き方を見て、何が本当の幸福なのかを考えるようになり、生きる力を身に付けた。

子供のいじめは、諸原因を調べ、対策を講じることが重要だが、大人の社会が実利本位の閉塞下にあっては、純真な子供の疑問と不満は解消されない。時には次元の異なる気宇広大なレクチャーをして、子供たちの緊張を和らげ、夢を膨らませるような授業の工夫も必要ではないか。

「銀河鉄道の夜」は、大正13年頃から約7年間、原稿の推敲が重ねられ、賢治が昭和8年に他界した後に出版された。彼が推敲中の昭和3年に、国際天文学連合(IAU)が、現在の88星座を定めた。

「星座」は、全天を水平線と垂直線で88区画に分割した領域で、全ての星は星座に位置付けられる。星座は星々を線で結び、ギリシャ神話などの人物や動物、道具に見立てた名前が付けられている。

「銀河鉄道の夜」では、2人の少年は、広大な宇宙の北天に輝く北十字星(白鳥座)から南天の南十字座まで旅をした。銀河鉄道で少年たちが通り過ぎた、南天のさそり座に赤く輝く1等星「アンタレス」に太陽系の赤い惑星「火星」が近づくと、昔から災害や戦争が起こると伝えられてきた。偶然の一致だろうが、平成13年のその接近時には、9・11同時多発テロ事件がアメリカで発生している。

いまサイエンス界では、その火星に人類が移住する計画がある。SFの世界が現実味を帯び始めた。火星は地球の半分くらいの大きさで、重力が地球の3分の1、1日は24.6時間、衛星が2つある。

問題は、人類が居住できる環境にあるかだが、大気圧は地球のわずか0.6%で、しかも大気の95%を二酸化炭素が占め、地球の大気に21%もある酸素は、ごくわずかしか存在しない。

火星移住には、居住環境、運搬手段、巨額予算の3ハードルが立ちはだかる。

世界36カ国語で発行される米ナショナルジオグラフィック誌(日本版11月号)は「火星移住・実現へのカウントダウン」で、その解決策を取り上げ、興味深い。

まず酸素は、火星の大気に大量に含まれる二酸化炭素を圧縮して電気分解して取り出す。次に水は、二酸化炭素に含まれる微量の水分を多孔質の鉱物に取り込ませたり、高緯度地方や赤道近くの表層土の氷を、それぞれマイクロ波で加熱、蒸発させたりしてつくりだす。食物は、火星と同じ化学成分の土壌を使い、トマト、ライムギなど14種類の植物栽培が実施されている。

再利用可能な大型のロケット開発に前進するアメリカのスペースX社は、2018年にも、無人宇宙船を火星の周回軌道に送り込む計画だ。火星への有人飛行は、アポロ有人月面探査飛行より巨費がかかり、人命の尊重が問われる。授業で話題にする場合、ここの点も参考にしていただきたい。

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