貧困と虐待問題解決へ 「学校プラットホーム」に期待

文科省は11月18日、家庭教育支援の推進方策に関する検討委員会の第5回会議を開き、年度内にもまとめる報告書の詰めの議論を展開した。特に、学力保障の疎外要因になっている貧困と虐待問題に切り込んだ提言が出されたのは、評価できる。

会議で注目されたのは、同検討委員会の座長でもある山野則子大阪府立大学人間社会学研究科教授の「家庭教育支援の推進方策~すべての子供・家庭の視点から~」と題する報告。現在、内閣府の子供の貧困対策検討委員会の有識者会議委員、中教審生涯学習分科会委員などを務め、最新の著書には『エビデンスに基づく効果的なスクールソーシャルワーク』(明石書店)などがある。

同教授は先行研究を踏まえながら、「子供を取り巻く様々な問題」として、(1)貧困や孤立が見えず、早期発見、早期対応ができない(2)就学後、多様な機関で協働して検討する仕組みがない(3)学校・家庭・地域を結ぶ仕事が不明確――の3点を挙げて説明した。

第1の問題点である「貧困や孤立が見えない」では、児童相談所の対応は、義務教育年齢の全校児童数の約1%、市町村も10%ほど。これでは、相対的貧困(約16%)や虐待につながる孤立(約30%)への対応が不可能で、「すべての子供たちへの支援とレッドゾーンの二層の支援が必要だ」と指摘した。

第2の問題点「就学後、多様な機関で協働して検討する仕組みがない」では、「乳幼児期は、保健所の健診システムによって全数把握され、リスクのある事例への予防的な取り組みが実施され、また、保健所と福祉の定例検討会議によって連携システムが存在しているが、就学後は、この連携や実践する仕組みがなくなり、経過観察や把握が途切れる。この結果、見えない貧困はなくならない」と分析。

第3の「学校・家庭・地域を結ぶ仕事が不明確」では、「校内でさえチームの規定が始まろうとしているところで、会議などでの事例共有や、地域と関係機関と学校の連絡会なども必要。これらを結び付ける人材としてスクールソーシャルワーカー(SSW)やコーディネーターが重要になるが、現状はその枠組みは不明確だ」としている。

これらの問題点を克服する試みとして最近注目されているのが、「学校プラットホーム」。学校を子供の貧困対策のプラットホームと位置付け、総合的な子供の貧困対策を推進する。SSWが中核となって児童相談所、福祉事務所、発達障害者センターなどの生活困窮者自立相談支援機関や教育委員会など、多くの教育機関の協力を得ながら問題の解決に当たる。

その意味で、この事業が成功すれば、学校・家庭・地域社会が一体となって「地域全体で未来を担う子供たちの成長を支える仕組みづくり」を構築することにつながり、画期的な試みともいえよう。この新しい仕組みを成功させ、貧困や孤立から子供たちを守り、確かな学力保障に結実することを期待したい。

この「学校プラットホーム」の必要性について同教授は、「すべての子供を把握している機関でないと、支援が必要な子供や家庭を発見できないし、発見後、必要なサービスを提供できない。全戸訪問が可能になっても連れ出す場所が身近な居場所でないと、親は来られない」と指摘している。文科省は、「教育相談の充実」「学習支援の充実」などを名目に予算措置も講じている。

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