新教育課程に着実な移行を 現行の実践をしっかり吟味して

教育新聞論説委員 工藤文三

 

2030年の社会を見据えた教育の展望を示した中教審答申がまとめられ、年度内には新しい学習指導要領の告示が予定されている。今年以降、実施に入る平成32~34年に至るまでの間は、新学習指導要領の趣旨の理解とそれを各学校の教育課程に具現化し実施するための期間として位置付けられる。

答申からうかがえる新学習指導要領の第一のポイントは、これまでも掲げられてきた生きる力の理念を現代的視点から再定義するとともに、「社会に開かれた教育課程」の実現を目指していることである。後者については、これまでも学校運営の観点から”開かれた学校づくり”が取り組まれてきたが、今回は教育課程に着目している点が特徴である。

第二に、これまでの学習指導要領は、各学校で指導すべき事項の基準としての性格が強かったが、今回は目標や内容、方法、学習支援、学習評価、実施のための条件を関連付けながら構造的に示す形となる。この意味で、学習指導要領は、「学びの地図」の枠組みを示すものとなる。

第三に、各教科等を学ぶ教育的意義を明確にするとともに、教科横断的な視点も含め、資質・能力を教育課程全体を通じて実現する方策を講じていることである。これまで公式には示されてこなかった教科等を学ぶ意義・本質が、教育課程全体との関係で明確にされた意義は大きい。

第四は、目指す資質・能力を、教科等の相互関連や教育課程全体との関連で実現していく取り組みとして、カリキュラム・マネジメントが強調されたことである。

第五は、各教科等の学習においてアクティブ・ラーニングと主体的・対話的で深い学びを求めていることである。その他、答申では各学校段階、各教科等における改訂の具体的な方向性が示された。

このような次期教育課程の姿を踏まえたとき、各学校においては、何をどのように準備し、教育活動に具体化していけばよいのであろうか。まず、確認しておきたいのは、学習指導要領の告示から移行措置、全面実施までに至る過程における準備や取り組みを示すロードマップを作成することである。平成29・30年度は、学習指導要領の趣旨の理解と実践に向けた準備を進めていくのが課題である。新学習指導要領が求める資質・能力の3つの柱を、各教科等の年間指導計画に具体化する道筋を付けていくことである。

特に、中身を同定して共通理解しにくいアクティブ・ラーニングと主体的・対話的で深い学びを実現する授業とはどのような授業なのか、実践面で検討していくことが必要である。

学校種ごとの改善課題に対応するとともに、学校段階を見通した取り組みを進めるのも重要である。小学校については、国語教育、外国語教育の改善、プログラミング的思考を育てる授業の在り方、時間割編成の工夫が課題となる。

中学校には、高校における教科・科目構成の改善を踏まえながら、義務教育最後の教育機関としての役割が求められる。また部活動を教育課程と関連付けるための具体的な仕組みを設ける必要がある。

高校については、高大接続改革と合わせて大幅な科目の再構成が行われる。全体として、知識や技能を活用し問題解決していくための力を育成する方向での改革である。小・中学校に比べて必ずしも十分とはいえなかった授業づくりや指導方法に関する研修を通じて、力量を高めることが求められよう。以上のような課題解決への取り組みを通じて、学校改善を進め、教育力を高めていくことを目指したい。

一方、学習指導要領の改訂は、全てにおいて新しい取り組みを求めるものではない。例えば、カリキュラム・マネジメントは、総合的な学習の時間の実施や学校評価の取り組みにおいて、既に一定程度実践してきたものである。アクティブ・ラーニングも同様である。現行課程における教育実践をしっかり吟味しながら、優れた取り組みを継承するのを心掛けたい。

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