伝統や文化を尊重 守る・つなげる・創る

中教審申では、育成を目指す資質・能力の中に「現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力」を挙げ、その一つに「グローバル化の中で多様性を尊重するとともに、現在まで受け継がれてきたわが国固有の領土や歴史について理解し、伝統や文化を尊重しつつ、多様な他者と協働しながら目標に向かって挑戦する力」を示している。グローバル化に視点を当てながら、「多様な他者と協働しながら目標に向かって挑戦する力」を支えるものとして「伝統や文化の尊重」を重視している。

「伝統や文化」は地域の人々の心のふるさとであり支えである。観光ブームの中で外国人が、日本人も訪れないような土地を訪ねている。その土地土地の伝統や文化に興味・関心があるらしい。これを機会に、各地の伝統や文化を見直し、継承や新たな創造につながるよう期待したい。というのも、伝統や文化が継承できずに消えていく恐れが多くなっているからである。

最近、テレビニュースの中で「なまはげ」の変貌が報じられていた。なまはげは、秋田県男鹿半島で行われている民俗行事で、国の重要無形文化財。鬼の姿の男たちが「泣く子はいねがー」「親の言うことを聞がね子はいねがー」などとと大声を上げて地域の家々を巡り、子供たちに訓戒を与えたり厄災を払ったりする。子供たちは恐ろしさから泣きじゃくりながら「よい子になります」「許してください」などと答える。親はわが子を抱いて守ろうとするがその目は笑っている。微笑ましい情景でもある。

だが、最近は状況が変わったという。まずは、なまはげの高齢化である。本来なら村の未婚男性が務めるのだが、若者は村を出て、いない。そのため残った人々が数十年も続け、なまはげ全員が60歳以上の村も。訪れる家にも子供がおらず、80歳代の年寄り夫婦だけの家も。かける声は「元気か」「丈夫そうだ。来年は孫を呼べ、そうすれば105まで生きるぞ」などと労いや励ましの声。行事の時期については、旧暦小正月の1月16日に行っていたものを、成人の日にし、さらに現在は、多くが里帰りする大晦日に行っているという。それも孫が大きくなり、親も里帰りしなくなって老夫婦だけの家になった。中にはなまはげの行事が途絶えたところもあると。

もちろん行政等も手をこまねいているわけではない。男鹿市では地域コミュニティーの維持に役に立つとして、行事を実施する町内会や各家庭に交付金を支給し、男鹿市観光協会は「なまはげ伝導士」の認定試験を実施するなど、この行事の保存や継承を図りながら、観光の振興に努めている。

国交省の推計によれば、2050年までに日本の現居住地域の20%が人の住まない土地となり、60%以上の地域で人口が半減するという。人々が大切に守り継承してきた伝統や文化が途切れたり消滅したりする心配が、大いにある。

学校教育では、総合的な学習などで各地の歴史や伝統や文化を子供自らが守り継承しようとする活動も報告されている。期待するのは、やはり子供たちである。地域の伝統や文化についても、子供たちが未来を開いていけるようにする必要がある。

わが国の文化遺産を守る予算は実に貧しいと、国宝や重要文化財を修復する修理施工会社、(株)小西美術工藝社のデービット・アトキンソン社長は著書に書いている。伝統や文化の尊重を求めるには、その根本である政策、条件整備を、守る・つなげる・創るの視点から長い目で着実に積み上げてもらいたいものである。

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