子供の貧困問題 「チーム学校」の理念で対策を

夏休みは子供たちにとって家族旅行や林間学校、あるいは塾の夏期講習など、普段とは違った貴重な体験をする期間だが、この夏休みを親子共に苦痛に感じる世帯も存在する。国民平均年間所得の半分以下である122万円未満の世帯、いわゆる「貧困家庭」と呼ばれる世帯だ。

貧困家庭に属する子供は、平成27年時点で13.9%(貧困率)、つまり17歳以下の子供の7人に1人は貧困状態にあると言われている。これは、OECD(経済協力開発機構)に加盟している先進国など35カ国の平均値(13.3%)を上回っている。

子供の貧困が国内で話題になったのは24年に、厚労省が国民生活基礎調査の結果を受け、「子供の貧困率が過去最悪の数字(16.3%)」と発表した時である。特に着目されたのが「ひとり親世帯」で、この世帯に限った貧困率は実に54.6%、子供2人に1人が貧困状態というショッキングな数値が明らかになった。

背景にはいくつか指摘があるが、最も大きなものは長く続く不況と言われる。離婚などによるひとり親世帯の増加とともに、小泉内閣以来続く規制緩和政策により非正規労働者が増え、正規労働者との間にさまざまな格差を生んだことがひとり親、とりわけ母子家庭に大きな負担を与えることとなった。例えば、年収の少なさから大きな負担となるのが食費や医療費、教育費で、これらは子供の学力面と健康面に大きな影響を及ぼす。世帯収入を調査項目に入れた26年の文科省の全国学力・学習状況調査で、世帯収入と学力には高い相関関係があることが明らかにされた。

学力が低く世帯収入が少なければ、義務教育以降の進学率や退学率にも影響が出る。内閣府が発表したデータ(26年)によれば、国内全世帯平均の大学等進学率が73.3%だったのに対し、生活保護世帯は32.9%、ひとり親世帯は33.0%であった。これは子供の就職状況にも反映され、次の世代の新たな賃金格差を発生させる。貧困家庭は貧困のスパイラルから抜け出せないということになる。

政府は25年に、「子どもの貧困対策推進法」を、26年に「子どもの貧困対策に関する大綱」を、27年にはそれを受け各都道府県が大綱を定めるなど、まずは法制化を進め、民間の資金協力も呼び掛けながらその重い腰を上げた。行政や民間のNPO法人などの努力により、ここ数年で「無料学習塾」や「子ども食堂」が全国各地につくられ、ひとり親世帯対象の児童扶養手当の増額も実施された。世帯全体の収入は増加し、貧困率は24年当時よりも改善された。しかし、ひとり親世帯について言えば、収入は若干増加したものの、生活が豊かになったわけではなく、相変わらずその状況は「貧困家庭」である。

この問題解決の対策を考えたい。成功事例を参考にすると、貧困家庭の「早期発見・早期支援」がまず大切になる。小学校1年生の全世帯に対し、保護者の年収、公共料金の支払い状況、虫歯の有無など子供の健康状態や食生活の情報を収集し、問題があればすぐに役所、福祉事務所、保健所、学校が一体となって対処する東京都足立区のように、学校を中核としたコミュニティー体制が構築されている自治体での成功事例が目立つ。

学校および関係機関は、新しい学習指導要領の本格実施を待つことなく、「チーム学校」「社会に開かれた教育課程」の理念を、子供の貧困対策のために即座に導入すべきではないだろうか。