新しく生まれ変わる道徳教育 真の人間関係構築力を育てるために

文科省は10月26日、平成28年度の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」の結果を公表した。児童生徒の暴力行為の発生といじめの認知件数が増加、とりわけ小学校の件数が大幅に増加している傾向がみられた。

本紙の11月6日号においてその原因分析を行っているが、注目されることは、学校の実態把握が進み、より事実に近い数値が報告される傾向にあるということ、暴力行為やいじめに関する加害者が低年齢化の傾向をみせているという点だ。実態把握が進んだことについては、国が暴力行為やいじめ問題に本腰を入れ、調査の内容・方法や調査後の情報公開および検証について各教育委員会に指導を行った成果といえる。今後、子供たちの実態をより正確に把握し課題解決に向けての効果的な指導を行っていくために、行政・学校がすべきことは何であろうか。

今回の結果を詳しく眺めていくと、暴力行為に関しては生徒間暴力が急増していること、いじめに関しては「冷やかしやからかい、悪口……」「軽くぶつかられたり遊ぶふりをして叩かれたり……」という子供にありがちな初歩的なコミュニケーションのトラブルからの発生が多く、それらの問題を自身や周囲の人間と協力して解決できない子供の悩める姿があることに気付く。

来年4月から、小・中学校とも次期学習指導要領の移行措置期間が始まる。すでに各学校では指導計画の作成など、そのための準備が始まっている。その中で子供の豊かな心の育成、とりわけ子供の人間関係構築力に関する対応はどのように推進されていくのだろうか。

今度の学習指要領改訂で注目を集めていることの一つが「特別の教科 道徳」だ。道徳が教科化された背景には、学校における道徳教育に対する忌避感や形式的な指導への払拭等があるが、発端はいじめ問題への対応である。

次期学習指導要領の道徳の解説書にあるように、「社会を構成する主体である一人一人が、高い倫理観をもち、人としての生き方や社会の在り方について、時に対立がある場合を含めて、多様な価値観の存在を認識しつつ、自ら感じ、考え、他者と対話し協働しながら、よりよい方向を目指す(中略)資質・能力の育成に向け、道徳教育は、大きな役割を果たす必要がある」といった道徳教育に対する期待感が社会一般にあるからであろう。

今回の教科化により、他の教科等との関連を図った教育活動の展開が推進されることが期待されるが、特に集団活動を通し互いのよさや可能性を発揮しながら集団や自己の生活上の課題を解決する特別活動や、実生活や実社会の中から課題を発見しそれを解決する総合的な学習の時間との連携を図った体験活動は不可欠だ。

体験活動は、人間関係構築力だけでなく自己肯定感、道徳感、正義感の育成にも有効である。体験活動を展開する際には、ポートフォリオ評価のような自己有用感と自己肯定感の醸成を促す評価活動を必ず組み入れるべきだろう。教師だけでなく活動に参加する指導者は皆心掛けてもらいたいものである。

そして、学校や行政はこうした取り組みや子供たちの活動の様子を積極的に情報公開し、社会全体で子供の成長を理解し見守る態勢を構築していくべきである。

このほか、課題解決能力を育み子供同士の相互理解を図るために、学校はディベートやコンセンサス・ゲームなど葛藤や対立、さらに合意形成を図ることのできる教育活動なども教科等と関連付け、新しく生まれ変わる道徳教育として展開していってもらいたいものである。

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