知識基盤社会における学校教育像 20~30年先見据え多角的な模索を

平成17年の中教審答申「我が国の高等教育の将来像」では、「知識基盤社会」の時代認識を示し、新時代の高等教育像につながる施策を提示。24年の中教審答申では、アクティブ・ラーニングなどの概念を提起、大学教育の質的転換を促す方向性を示した。

初中教育については、20年の中教審答申において、改訂学習指導要領の理念として、「知識基盤社会」の言葉を用いて「生きる力」の意義を明確にした。具体的には学校教育法に規定された基礎的・基本的な知識・技能の習得やそれらを活用して課題を解決する思考力・判断力・表現力等の重要性を掲げた。これを受けて改訂された20・21年改訂学習指導要領は、それまでの「生きる力」の理念を継承しながら学力の3つの要素を明示するとともに、二項対立的な学力観に陥ることなく、バランスの取れた学習指導を実現することを狙いとした。

20・21年の改訂以降、上記24年の答申で大学教育におけるアクティブ・ラーニングが提示されたことを踏まえると、今回の29年学習指導要領の改訂は、「知識基盤社会」における学校教育像と学力像を教育課程として具体化したものとして捉えられる。

特に知識・技能の習得と共に活用型の学力、探究的な学習を教育課程全体に貫いている点は、これからの社会における「生きる力」を育む要請に応えるものとなっている。今年度中に改訂される高等学校学習指導要領および大学入試改革の具体化によって、「知識基盤社会」における教育と学習の姿が、初中教育から高等教育まで一貫することになる。平成30年代の前半は、新教育課程の全面実施を通して主体的・対話的で深い学びの定着が求められ、後半は新課程に対応した大学入試等も実施される。

ダイナミックな改革が進められようとしているが、改革を順調に進め成果を上げるためにはどのような取り組みが必要か。

一つは、あれかこれかの二者択一的な学習指導観、学力観にとらわれないようにする。いわば〝旧来型〟の学力とでもいえる知識習得型の学力も知識の性格によっては、重要なことを踏まえたい。発達段階や児童生徒の学習状況によっては、習得・再生型、ドリル型の学習も教育的意義がある。

第二は、これまでも課題であった児童生徒の学習の遅れやつまずきへの対応をどう考えるかという点。「学習内容を確実に身に付ける」工夫として、個別指導、グループ別指導、繰り返し指導、習熟度に応じた指導などが取り組まれてきた。

これらの工夫はおおむね基礎的・基本的事項の確実な習得のために用いられてきたが、今後もこれらの工夫が有効かどうか実践の中で模索していく必要がある。ともすれば学習が遅れがちになりかねない児童生徒について、主体的・対話的で深い学びや問題解決的な学習、知識・技能を活用する学習が、どのように効果的に展開できるか、工夫が求められる。

第三は、地域環境の変化の中でどう新課程の趣旨を生かし、質を担保した教育指導の体制を確立できるかという点。地域によっては、少子化の一層の進展の中、学校規模が小さくなる地域があり、また、勤務年数の少ない教員の割合が高い学校もみられる。さらに自治体によって学校支援の体制に違いがあることも、学校の取り組みに影響を及ぼす可能性がある。教員の多忙化も教材研究や研修の在り方に影響を及ぼす。

日本の学校教育は、現在大きな変革のうねりに中にあるといっても過言ではない。これまでの経験にとらわれず20~30年先を見据えた多角的な視点からの取り組みを模索したいものである。

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