子供の読解力 全ての分野の研究者で向上させよう

先月、国立情報学研究所の新井紀子教授らの研究チームによる中高生を対象とした「リーディングスキルテスト」(RST)の結果が発表された。平成28年から今年7月までに、全国の中学生や高校生約2万4千人を対象に行われた。

学校で使用している教科書や辞書、新聞記事などの文章を読み、意味や文章の構造などを理解できているかを調べるものである。基礎的な文法を習得していれば答えられる問題となっているが、文章の基本的構造を理解できていない中高生が多くいるという実態が判明した。

例えば、中学生の社会科の教科書にある「幕府は、1639年、ポルトガル人を追放し、大名には沿岸の警備を命じた」という文と、「1639年、ポルトガル人は追放され、幕府は大名から沿岸の警備を命じられた」という文が同じ意味かという問いに、正解は「異なる」であるのに対し、「同じ」と答えた中学生が43%、高校生が28%いたという結果だった。他の問題も同様の傾向だった。新井教授は、読解力不足が今後の社会生活に与える影響に懸念を示しており、中学校卒業までに中学校の教科書を読めるようにすることが義務教育の課題としている。

この記事を読み、思い出すのが1年前に文部科学省から発表された「学習到達度調査(PISA)2015」の調査結果である。

数学的リテラシーと科学的リテラシーに関しては前回以上の好成績を残したが、読解力に関しては順位を下げた。読解力の結果に対し文科省は「コンピュータ使用型調査への移行の影響」とし、学力そのものが下がったわけではないとしていたが、この分析は今回の調査結果が出る前に発表されたもので、むしろ今回の調査の方が現在の実態に近いと言えるのではないか。このPISA調査について新井教授は、「PISAのような複合的な力を問うテストでは、学習者が読解のどの部分でつまずいているかなど十分に分析ができない」と指摘している。

それに対し今回のRSTは、言葉の構成を体系的に追えるかどうかを問う点に重点が置かれているため、学習者のつまずきを診断し学習者や教師にフィードバックでき、設問も学習指導要領の枠内で作ることができて、わが国の教育課題に沿った分析が可能としている。ただ、中高生の読解力が低い原因については今回の調査では十分明らかにできなかったため、今後さらに調査・研究していくとのことだ。

今回の調査から、現在学校で行っている国語教育をはじめとした読解の指導は、小学校段階から見直しが必要ということになる。次期学習指導要領では、読解力の向上に向けた対策に、「語彙力の強化」「文章を読むプロセスに着目した学習の充実」「情報活用に関する指導の充実」「コンピュータを活用した指導への対応」を掲げている。今回のRSTの結果を受け、国としてもさらなる対策を打ち出していくものと思われる。

RSTを開発した新井教授は、国語教育の研究者ではなくIT活用の研究者だ。東大に入学できる人工知能(AI)を持つロボット開発に携わっており、その過程でわが国の子供の読解力の低さに気付き、RSTの開発に至った。AIが人間社会においてますます存在感を増していく状況の中で、子供たちが将来、AIに仕事を奪われないよう、教育に携わる者だけでなく、さまざまな分野の者が協力し読解力向上を図ることは、われわれ大人たちに課せられた義務といえよう。