指導主事と働き方改革 その激務に手を差し伸べるべき

昨年12月26日に文科省が発表した「学校における働き方改革に関する緊急対策」に冷水を浴びせるような出来事が、年の明けた1月8日に新潟県で起こった。同県の教育委員会に勤務する40代の女性職員が5日に職場で倒れ、その3日後に死亡したというもので、本紙でも何度か報道している。

過労死の疑いもあり、現在、同県では第三者委員会を設置しその原因等について調査している。これまでの発表によれば、死亡した職員の昨年4月から12月までの平均時間外勤務は74.7時間で、死亡する直前の11月が99時間、12月が125時間、年末年始の閉庁日にも出勤し、倒れる前日も午後11時過ぎまで勤務していた。過労死ラインでは、発症あるいは死亡1カ月前の時間外勤務が100時間を超える状況があるが、まさにそのケースに当てはまる。真相はいずれ明らかになることだろう。

最初、記事を見た読者の中には、この職員を指導主事と思った人も多かったのではないだろうか。なぜなら、指導主事こそ膨大な時間外勤務を日常的に繰り返す職だからである。

指導主事とは、地方教育行政の組織及び運営に関する法律(通称「地教行法」)第18条に規定された職で、学校における教育課程や学習指導をはじめ、専門事項に関する事務や指導・助言を行う学校教育のスペシャリストである。通常、指導主事には教員を充てることから、給与体系は学校に勤務する教員と同じで、時間外勤務手当も支給されない。だが、その業務内容は多岐にわたり50種類とも80種類ともいわれる。

各都道府県や市町村教委に配置されているが、その数は各自治体によってさまざまだ。勤務形態、特に勤務時間についての実態を示すデータは少なく、経験者、あるいは指導主事と接する学校関係者の話から、ほとんどの指導主事は月平均の時間外勤務が80時間は優に超えているといわれている。

市町村教委に勤務する指導主事などは、運動会など休日に開催される学校行事や、子供が参加する地域行事の視察などもあるため、休日出勤の機会が多い。超勤手当の支給はなく、代休は認められても休めばその分の仕事が休み明けに待ち受けている。

本来業務である学校管理職や教員に対する教育課程、学習指導に関する指導助言活動のための時間が他の事務業務に取られ、学校の保護者や地域住民の苦情処理のほか、議会対応もこなすなど、肉体的にも精神的にも負担の大きい職業なのである。

学校管理職や教員を支える存在である指導主事の勤務実態への対策について、これまで公に語られることは少なかった。教員も国の一連の働き方改革の対象となり、その勤務実態が明らかになって、対策が始まったのは一定の評価ができる。

しかし、新潟県職員の死亡事故をきっかけに、あまり注目されてこなかった指導主事も含めた、官公庁の職員に対する働き方改革も同時に進めるべきである。指導主事の場合、前述の通りその配置には教員を充てており、この問題は根本的に教員の働き方改革と同質であることから、結局は教員の定数改善しか有効な解決策は見えてこないとも言える。

2020年からの新学習指導要領の全面実施を控え、学校では新教育課程への準備が本格化する。そのための資料づくり、学校への指導・助言等、学校の裏方となる職員の存在を忘れてはならない。

彼らは学校管理職や教員が安心して子供を指導する環境整備の仕事に、誇りを持って激務をこなしている。そうした人間に救いの手を差し伸べることに異論を挟む者はいないだろう。