義務教育の年限 新たな懸案問題で改革論議を

教育界は現在、「義務教育の年限」の問題、これに関連した義務教育制度の改善に対する関心が高まっている。2004年8月に当時の河村建夫文部科学大臣が提唱した、義務教育の改革案以来の高まりを見せていると言ってもよい。

当時の改革案では、幼稚園や保育所などの最終学年を無償化し、基礎学力を早期に身に付けさせることなどを目的とする方向性を打ち出した。幼保の枠組みを維持したまま、小学校生活にスムーズに移行できるように改革するほか、小・中一貫校を導入するなど制度の弾力化や、中学校の教員が小学校でも教えられるよう教員免許の総合化を検討することなどを打ち出した。

これらの改革案は結局、日の目をみなかったが、最新の同省のホームページに、「義務教育年限」に対する中教審初等中等教育分科会(第37~45回)での各専門家委員の意見が収録されている。

その意見を集約すると、「義務教育年限」の延長については、「延長すべき」という意見も出されたが、(1)意識調査において賛成の割合が低く(2)延長による教育効果がはっきりしていない(3)財政措置が必要である――などの理由から、現行の9年を維持すべきという意見が多かった。

一方、個別の意見の中には、賛否両論、さまざまな意見が出されている。

例えば、「小学校の教育がきちんとなされるためには、義務教育を低年齢化するというのはやむを得ない」「義務教育年限を延長するよりは、9年間の義務教育の条件整備をさらに進めて、教育効果を上げるほうが現実的」「現在、幼稚園教育では、3歳、4歳、5歳の各段階に応じて教育内容を整理し、充実していこうと進めているのに、5歳児を小学校に入れるというのは混乱のもとになる」「5歳児が心身ともに小学校教育を受けるだけの発達状況にあるのか、その教育効果がはっきりしていないので、実証的な研究が必要。子供の発達状況から見て、6歳で就学という現在の制度は妥当だ」「21世紀型の学校は、子供が学校に行くまで発達しているかどうかを親が判断し、学校もそれを認めるという方向にいくと思う」「義務教育を9年からさらに延長するというのは、今の高校生の状況をみると学ぶ意欲が必ずしもない子供たちを学校に拘束することになり、教育上よくない」「学制改革議論には慎重であるべき。学校教育は普及した一方で、いじめ、不登校、未履修などの問題のように空洞化が起きている。それを埋めていくための手立てについて検討が必要」など。

海外の動きも、日本の義務教育の改革論議に影響を及ぼす可能性もある。特に、フランスでは、大統領主導で義務教育年齢を6歳から3歳に引き下げ、19年9月の導入を目指すというビッグニュースが届いた。ただ、OECDの学習到達度調査(PISA)で欧州の中で最も成績が良いフィンランドとエストニアでは7歳から義務教育が始まる。義務教育年限と成績との関係が必ずしも連動していないことも考慮する必要がある。

「義務教育」の改革論議は、個別の難題が山積しているだけに、拙速に取り組めば失敗する可能性が高い。だからと言って、このままなおざりにすることは許されない。これを機会に、国の主導で、多くの教育関係者を巻き込んで、国民的な議論を展開し、制度化という、世界に誇れる大事業に取り組んでもらいたい。