東京・足立区立中学校の性教育授業 実際の授業はどう受け止められたのか

東京都足立区立の中学校で行われた性教育の授業を巡り「学習指導要領を大きく逸脱した」との批判が起き、性教育に力を入れてきた教育現場が戸惑っている。発端は今年3月16日の都議会文教委員会。授業を問題視した自民党都議が「本来は、高校で取り扱う避妊や人工妊娠中絶に関する授業が中学校で行われたことは、生徒の発達段階を無視した指導で不適切だ」と取り上げたのがきっかけである。

足立区教委によると、授業は3月5日、中学3年の総合的な学習の時間(人権教育の一環)に設定。保護者や地域の人に公開され、5つのクラス、約160人の生徒が受けた。「自分の性行動を考える」をテーマに、養護教諭が50分の授業を通じて人工妊娠中絶の現状を紹介、10代の中絶増加や中絶手術ができる時期、手術の費用について説明した。学校側は「自分や相手を大切にし、無責任な性交渉を避けるべきだと教えることが目的」と昨年6月に保護者会で計画を伝えた。反対意見はなかったとされる。

授業に先立って実施されたアンケートでは踏み込んだ内容が目立つ。「高校生になればセックスをしてもよいか」を問う意識調査のほか、避妊方法として「コンドームをつける」「膣(ちつ)外射精をする」「安全日を選ぶ」などの是非を質問している。授業でも「高校生の性交渉は許されるか」「もし妊娠したら」といった問題について生徒に議論させた上で、養護教諭らが避妊や人工妊娠中絶に関する正しい知識を解説した。妊娠を避ける方法についても取り上げ「性交渉をしないことが一番確実」とした上で、コンドームや低用量ピル、性交後に使用する「緊急避妊薬」の使用法や特徴、入手方法を配布資料で紹介した。

都教委は学習指導要領を超える内容が「保護者の理解を必ずしも十分に得ないまま行われた」と判断し、「課題のある授業」と結論付けた。中でも疑問視したのは、学習指導要領でも取り扱わない「性交」を取り上げ、本来は高校で取り扱うべき避妊や人工妊娠中絶などを具体的に説明した点。「かえって性交を助長する可能性がある。発達段階が異なる生徒全員に向けた内容としては配慮が足りない」と批判した。4月26日の定例会では、学習指導要領を超える性教育の授業を行う場合は事前に全保護者に説明することを求め、保護者の理解を得られた生徒を対象に個別の授業をするよう指導していく方針を確認した。

一方の足立区教委は、授業は不適切ではないと反論している。

生徒と保護者は、実際の授業をどう受け止めたのか――。授業は役に立ったのか、立たなかったのか。「豊かな心」と「健やかな体」の育成につながったのか、つながらなかったのか。養護教諭が口にする「性交」や「避妊」の言葉に過剰反応したり、嫌悪感を抱いたりしたケースがあったとしたら、それはなぜだったのか。その理由を知るためアンケートを改めて実施し、課題を確認してほしかった。授業の是非について都議と教委だけが意見を戦わせても、性教育の新たな展望はない。

内閣府が2月にまとめた「青少年のインターネット利用環境実態調査」によると、10~17歳の82.5%がインターネットを利用。保護者の目の届かないところで有害サイトなどにアクセスし、性情報を簡単に入手できる状況が子供を取り巻いている。そうした中での性教育である。「性交を助長する可能性がある」とした都教委の考えが老婆心なのかどうか、それを判断できるのは学校側、生徒、保護者に違いない。