いじめ未然防止・早期発見 学校体制は具体的に機能しているか

6月も近くなり、各学校・学級の教育は教育課程に基づいて着実に進められ、各教科の授業は落ち着きある充実した取り組みを展開していることであろう。一方で、子供たちの中には新しい学級、教師、集団の人間関係にストレスを感じたり、家庭でのストレスや不満から、いじめに向かう動きが起きはじめる時期である。校内のいじめの未然防止や、早期発見・早期対応の教育・指導体制は機能しているだろうか。

「いじめ問題は教職員がすぐに気付く状況をどう実現するかが重要だ。アンテナの感度がよく、さっと動ける危機管理体制のある学校文化をつくる。一筋縄ではいかないが、ここが大事と考えている」と記者会見で語ったのは、この春から広島県で女性の民間出身者として初めて教育長に就任した平川理恵氏である。氏は横浜市立の中学校2校の校長時代にも、いじめ問題の危機管理体制を整えて成果を上げていた。取り組み方によって、いじめは未然防止や早期発見できることを、身をもって証明した。「一筋縄ではいかないが」というのは、ご本人もそれなりに苦労されたのであろう。今日の子供たちの実態がそう認識させたに違いない。

各学校では、「いじめ防止対策法」や文部科学省策定の「いじめ防止基本方針」、各教育委員会の同方針などに基づいて「学校いじめ基本方針」を作成し、学校体制を整えこの問題に取り組んでいる。しかし、いじめは後を絶たない。未然防止、早期発見・早期対応が可能か体制を見直し、全校一致の下、システムとして機能しているかを確認する必要がある。

いじめの未然防止については国立教育政策研究所の生徒指導・進路指導研究センターが、「居場所づくり」と「絆づくり」の二つを区別しつつ、その両方を行うことを推奨している。「居場所づくり」は子供が安心・安全に学校生活を送ることができると感じられるような「場」として、学級や学校を変えていくこと。「絆づくり」は、教師の居場所づくりを前提とし、その上で子供が自ら主体的に取り組む活動の中で互いを認めあったり、心のつながりを感じたりできることとしている。全ての子供が活躍できる場面の準備は必要だが、絆づくりは子供の主体的活動となるような支援が求められる。これについては、全教職員の共通理解と一致協力した指導・実践が何より求められる。

早期発見はいじめへの迅速な対応の前提と言われ、全ての教職員の連携とささやかな子供の変化への気付きが強く求められる。いじめは教師がいないところで行われたり、複数の加害者が巧妙に少しずつ行っていたりで発見が難しい。ラインでの見えない、手の届かない状況でのいじめなど、状況も多様化している。

そうなると、いじめられている本人の姿や行動から、いじめの芽や兆候を見いだすことが重要となる。

子供のささやかな変化――あれっ、おやっ、どうしたかな、何か変だ、などと感じたことを躊躇(ちゅうちょ)なく教師間で情報交換し、複眼的な見守りをすることが大切だ。個人ノートや生活ノート、教師との交換日記などの活用、さらにはアンケート調査で多角的に観察し、見守り、学校全体の共通理解として機能することが、地道であるが確実な取り組みであろう。

これらを平常心で行い、教育活動の質を高めていくことが平川氏の言う「学校文化」醸成であり、実は新学習指導要領が求める学校の姿でもある。