「ゲーム障害」に立ち向かう 教育・医療分野を軸に推進を

 世界保健機構(WHO)は6月18日、スマートフォンなどでのゲームにのめりこみ日常生活に支障をきたしたり自身の健康を損なったりする、いわゆる「ゲーム依存症」を「ゲーム障害」としてIDC(国際疾病分類)の最終案に明記した。「ゲーム障害」とは、「ゲームをしたい欲求を抑えられない」「ゲームをすることを他の日常生活の活動よりも優先してしまう」「家族関係、仕事、学習などに重大な問題が生じてもゲームをやめられない」といった症状が12カ月以上続く状態を指す。

 わが国でもこの問題は以前から指摘されていた。この分野の研究に詳しい独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター院長の樋口進氏によれば、ゲーム依存症と診断された人間の大部分がインターネットゲームをきっかけとしており、2012年の厚生労働省の調査では「インターネット依存」の中高生は約51万8千人(全体の約8%)と報告。「ゲーム障害」の危険性がある中高生の数は、スマートフォンの普及を考慮するとさらに増えているものと推測される。

 樋口氏はさらに、ゲーム依存の人間とギャンブル依存やアルコール依存の人間の症状および脳内の反応パターン・経過が酷似していると指摘。人間の行動は脳の中の本能をつかさどる大脳辺縁系と、理性をつかさどる前頭前野によってコントロールされており、通常は前頭前野がやや優勢な状態で平衡が保たれている。

 依存症の人間はみな大脳辺縁系が優勢で、欲求や行動を自らの意思ではコントロールできない。最近のゲームはオンライン化が進み、依存症の被害が相乗的に拡大する傾向にある。成長段階にある小・中・高校生にとっては危険な存在だ。ゲーム依存が招く症状として、体力や骨密度の低下、睡眠障害、感情のコントロールができない「キレる」状態やうつ状態などが指摘されている。その先にあるのは学業不振や不登校、家族関係の悪化だ。こうした状況に対し、日本のゲーム業界も加盟しているエンターテインメントソフトウェア協会(ESA)からの反発もあり、国の対策は進んでいないのが現状だ。

 樋口氏は自身が勤務する医療センターに専門外来を設置しており、問診や身体検査、心理検査をすることで依存症の発見・診察に努めているが、数カ月先まで診察の予約がいっぱいだそうだ。直ちに国は各地にこうした施設を設置すべきであろう。

 学校では現在、情報活用能力の育成の一環として情報モラルを指導している。さらにSNSを含めたインターネットの適切な活用について組織的・計画的に指導をする必要がある。感情のコントロールに関係する前頭前野を活性化するのに効果的なのが読書活動である。校内での読書指導をさらに推進することが大切だ。家庭と連携し、スマホやインターネットでのゲームに関する家庭内でのルール作りを呼び掛けるとともに、家庭での読書活動の協力を求めるべきだ。ルール作りに関しては、使用する時間・場所・金額を親子で決めお互いに守り、読書活動と連動して「ノーゲームの日」「家族読書の日」を設定することも一案だろう。

 富山市の警察官殺害事件など、20代の若者による凶悪な事件が続いている。彼らの犯行にはいずれも感情の自己コントロールが働いていない状況が見える。ゲーム依存症の認定を機会に、子供の頃からの感情のコントロール育成を、ゲーム業界などを巻き込んで教育、医療分野が本格的に協議していくべきではないか。