未来の学校教育を構想する 変化の激しい環境への対応

現在の学校教育制度は、教育課程の編成と実施による知育・徳育・体育を通じて、児童生徒の人間としての成長と社会的自立に向けた資質・能力の育成を担ってきた。教育課程は学校段階・学年を前提に、各教科等に分けて編成され、一定の授業時数の中でそれぞれの目標実現に向けた取り組みが行われている。学習の成果は各教科等やその他の学習評価として把握され、また、進級・進学というステップを経て児童生徒は育っていく仕組みがとられている。

このような学校教育システムは明治以降の近代化の中で形作られ、時代や社会の発展に寄与してきた。第2次世界大戦後の日本の高度経済成長は、さまざまな社会経済的要因とともに学校教育の成果としても捉えることができる。その結果、昔に比べると便利で相対的に豊かな社会の中で国民が生活できる環境となっている。

一方、21世紀に入って以降、日本はこれまで経験したことのない変化の中にある。特に少子高齢化、情報化、グローバル化などを基調に、加速度的な社会の変化、複雑化の最中にある。日本の労働生産性の低さが指摘されたり、一人当たりGDPも20世紀時と比べて順位を下げたりしている。

次期学習指導要領改訂についての中教審答申(2016年)では、「2030年の社会と子供たちの未来」の章を設け、「予測困難な時代に、一人一人が未来の創り手となる」ことを掲げた。「開かれた教育課程」「持続可能な社会の作り手」「主体的・対話的で深い学び」などのキーワードは、未来社会に向けた学校教育の在り方を示したものである。

この変化の激しい環境に対応するための、未来の学校や教育の在り方についての研究や取り組みがある。国研が行った「未来の学校づくりに関する調査研究」(13年)では、人口減少、情報コミュニケーションテクノロジーの普及、グローバル化の進展、個別に指導を要する子供の増加の4点を現在の子供を取り巻く環境変化に挙げている。今後の教育の方向性として、教育行政、学校環境、教育内容、学習方法、指導スタッフの5つの区分で捉え、教育環境については、多様な学びに対応する柔軟で快適な学習空間の創造などを、学びの方法については学びの科学化と主体性に基づく学習、互いに異質な集団からの学びを挙げている。

「未来」の言葉を用いる最近の取り組みでは、経済産業省の「『未来の教室』とEdTech研究会」の第一次提言(18年6月)がある。EdTechとは、「テクノロジーを活用して教育に変革をもたらすサービス・技法」「サービス・技法を構成する要素テクノロジー」を指す。提言では、日本社会の課題を「創造的な課題発見・解決力」にあると捉え、「今」を前提としない「未来の教室」の可能性を提示。ワークショップで集まった声には▽探究プロジェクトで文理融合の知を使って、社会課題などの解決を試行錯誤する▽教科学習は個別最適化される▽「学力」「教科」「学年」「時間数」「単位」「卒業」の概念が希釈化され、学びの自由度が増す▽先生の役割は多様化する――などがあった。

近代の学校教育システムの特色は、「教科」「学年」「学級」「時間」といった要素によって構成される教育課程、評価と進級、資格を有する教員による一斉指導、学校を中心とした学びの機会と資源の提供、その他の点にある。前述の2つの研究と取り組みは、学校教育システムの未来にどのようなものが描けるかを構想したものだ。日々の教育活動を支える教育システムの意義と特色を振り返るとともに、未来の学校教育の在り方を構想するきっかけとしたい。