防災教育の徹底 身を守る意識と能力の向上を

2012年3月31日に内閣府中央防災会議が発表した「新想定」で、高知県黒潮町は南海トラフ巨大地震による最大震度が7、最大津波高が34.4メートルと想定された。この数値は日本一厳しいものであり、マスコミに大きく取り上げられた。

その後の町を挙げた取り組みを、同町教委の畦地和也教育長が雑誌『教育展望』(教育調査研究所刊)の10月号特集「巨大地震に備える防災教育の視点」で報告している。目を引いたのが、町内の高齢女性の短歌だった。

〈大津波 来たらば共に 死んでやる 今日も息が言う足萎え吾に〉―高齢で足が悪い自分は津波が来ても逃げられないと言ったら、一緒に住む息子が、俺が一緒に死んでやるよと言った―という、新想定が出された直後の心情を歌ったものである。

2年後、この女性は〈この命 落しはせぬと足萎えの 我は行きたり 避難訓練〉と詠んだ。畦地氏は言う。「町が『犠牲者ゼロ』を目標に掲げ、『あきらめない。揺れたら逃げる。より早く、より安全なところへ』という防災思想をメッセージとして発信し続けた結果が、ここに現れている」。あきらめない取り組みが住民の意識を変えている。

わが国が世界でもトップクラスの災害大国であることは、従来から再三指摘されてきたが、国民の認識は薄い実態がある。逃げ遅れたり、危険な場所を見に行ったりして命を落とした人々の報道が災害のたびに繰り返される。子供たちに対しては、防災教育の質を向上させ、繰り返し着実に行い、自分の命は自分で守る意識と能力を高める必要がある。

新学習指導要領の総則では、「安全に関する指導に当たっては、学校の安全教育の目標や全体計画、各教科等との関連などを考えながら進めることが大切である」としている。

また、「災害等を乗り越えて次代の社会を形成することに向けた現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力を、教科等横断的な視点で育成していく」よう求めている。これらを踏まえて学校・地域の実態に即した防災教育を計画し、実践を一層充実させていかねばならない。

実際のところ、各学校の取り組みはどうだろうか。同じような避難訓練を繰り返すだけで済ませてしまっていないか。これまでの取り組み・実践も踏まえて形成的に評価し、改善につなげてほしい。

その際、「カリキュラム・マネジメント」の三つの側面を生かしたい。

第一の「教科等横断的な視点」から各教科等に位置付けられた防災教育に関する内容を確定し、目標との関連を図りながら全体計画を作成して取り組めているか。

第二の「PDCAサイクルの確立」は、計画・実践の評価で明らかになった改善点を次学期や次年度の計画に反映し、質の向上につなげているか。

第三の「教育内容と教育活動に必要な人的・物的資源等の効果的な組み合わせ」は、地域・家庭と一体となって防災教育を進めているか。これらの視点を通して改善を図りたい。

平成最後の本年も、震度7の地震、強い勢力の台風、暴風雨、高波、噴火、さらには酷暑と自然の猛威が続いている。改めてこれらに向き合い、正しい知識・理解と、自分の身は自分で守る自覚と能力を養う教育を確実に実践することが大人の責任である。災害列島に住む子供たちの未来のために。