2040年高等教育のグランドデザイン 懸念は「具体的な支援策の欠如」

中教審は10月5日に開いた総会で、「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」の答申案について審議した。パブリックコメントによる意見集約を経て、今秋にも答申する予定だ。今後の大学、高専、専門学校などの在り方を決める重要な答申であり、初等中等教育などにも多大な影響を及ぼすとみられるだけに、成り行きが注目される。

答申案では、「2040年に必要とされる人材」として▽基礎的で普遍的な知識・理解等に加えて、数理・データサイエンス等の基礎的な素養を持ち、正しく大量のデータを扱い、新たな価値を創造する能力▽地域や国家間の対立やジレンマを克服するコミュニケーション能力、自律的に責任ある行動をとる力――などを持った人物像を挙げている。これらは、テクノロジーの急速かつ継続的な変化、予測不可能な時代の到来を見据えたものである。そして、そうした人材を養成していくために▽「何を教えたか」から「何を学び、身に付けることができたのか」への転換▽学内外の資源を共有化し、連携を進め、学修者主体の教育に転換(個々の教員の教育手法や研究を中心にシステムを構築する教育からの脱却)▽学修者が生涯学び続けられる多様で柔軟な高等教育システムの構築――を打ち出している。

「多様で柔軟な高等教育」の実現については、①学生②教員③教育プログラム④ガバナンス⑤大学の「強みの強化」――の視点から方策を掲げる。例えば①では、「18歳で入学する日本人」という従来のモデルを脱却し、社会人や留学生を積極的に受け入れる体質転換を提言。留学生は高度外国人材として日本で就職することも視野に入れる。②も実務家、若手、女性、外国籍など、さまざまな人材が教員として登用できるような制度の在り方を検討すべきだと述べている。いずれにしてもこれまでの慣例にとらわれない、思い切った改革が必要だということだ。

答申案が示すものは、まだ世界のどの国も経験したことがない状況の到来である。少子高齢化や環境問題、経済状況の停滞などにいち早く対峙(たいじ)する、「課題先進国」としての日本の姿だ。さまざまな課題を解決する「新しい知」を生み出すには、国籍・年齢・性別・障害の有無といった枠を取り払い、誰もが学び続けることができる環境を整える必要性を訴えている。

これまでの高等教育の在り方を根底から見直すグランドデザインの背景に、子供たちが直面する未来の日本の姿があることは十分理解できる。多様性と柔軟性の確保をうたう教育研究体制も、実現すれば高度なスキルを持つ人材の育成を後押しするだろう。ただ、こうした改革への支援方法や財政支援の在り方については詳述されていない。

答申案は「全ての学修者が自らの可能性の伸長を実感できる高等教育改革の実現であり、それができない機関は社会からの厳しい評価を受けることとなり、その結果として撤退に至ることもあり得ることを覚悟しなければならない」と強い調子で教育機関に促している。加えて初等中等教育段階においては、「文理分断の状況を改善し、また、多様なキャリアを自ら考えていくことができる教育が行われていることが前提」として、今回の改革案が高等教育のみならず、初等中等教育にも与える影響を示唆している。それならば国としてどのような支援の仕組みを構築できるか、具体案を検討して示すべきだろう。引き続き、今後の推移を見守りたい。

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