「過労死白書」が示す課題 もはや教員増の実現しかない

厚労省が10月30日に発表した「過労死等防止対策白書」によると、教職員の80.7%が「業務に関連するストレスや悩み」を抱え、その主な原因が「残業の多さ」であると分かった。教職員は過重労働が多く発生している重点業種の一つに挙げられ、全国の国公私立の小・中・高校、特別支援学校などに勤務する教職員を対象に行ったアンケート調査の結果(有効回答3万5640件)も報告された。勤務時間の状況や過重勤務の理由は、2016年度「教員勤務実態調査」と同じような内容であったが、ストレスに関する設問については、いくつか注目すべき結果が出ている。

業務に関連するストレスや悩みが「ある」と回答した者を職名別にみると、「副校長・教頭」(83.2%)が最も多く、次いで「教諭(指導教諭含む)」(83.1%)、「主幹教諭」(82.7%)が続く。ストレスや悩みの内容は「長時間勤務の多さ」(43.4%)、「職場の人間関係」(40.2%)、「保護者・PTA等への対応」(38.3%)、「学校や児童・生徒を取り巻く環境」(31.1%)、「休日・休暇の少なさ」(28.6%)が上位を占めた。

ストレスで体調を崩したり、精神的に追い詰められ精神疾患を発症したりする教職員は後を絶たない。特に精神疾患は回復に長い期間を要する場合が多く深刻だ。精神疾患を発症した学校教員の負荷業務の分布(17年度の総務省調査研究結果)をみると、「担任等」(65.2%)、「係・担当等」「事故・災害等」(共に60.9%)、「部活動顧問」(52.2%)などであった。いずれも教員である以上避けられない業務であるといえる。文科省の調査では、14年度以降精神疾患による休職者は減少傾向にあるものの、全教職員数の0.53%を占めており、決して安心できる数字ではない。

白書では、学校のストレス対応策として各教職員のストレスチェックや集団分析を活用した職場環境改善、過重勤務防止策としてICTの活用やタイムカード導入による勤務時間管理の徹底を提言している。だが、先述の教職員アンケートにおいて、過重勤務防止に向け必要だと感じる取り組みは「教員(専科教員を含む)の増員」が78.5%と圧倒的に多く、次点以降の「学校行事の見直し」(54.4%)、「教員同士のコミュニケーション円滑化」(43.1%)を大きく引き離している。「教員の増員」以外は、すでに自助努力で実施している学校も多いが、児童生徒の減少に伴う学校の小規模化により教員1人にかかる負担が増加しているいま、こうした努力も十分に実を結んではいない。職場環境の改善を学校に委ねることには、もはや限界が来ているといってよい。

今回の白書や諸調査の結果を見る限り、今の学校の実態は、バブル崩壊後の企業がリストラなどギリギリまでわが身を切り詰め続けた状況を想起させる。その結果、企業の信頼を失墜させる数々の不祥事や、違法労働で人を使いつぶす「ブラック企業」を生んだことは記憶に新しい。

こうした学校の現状が教職という職業への幻滅につながり、今年の各自治体の教員採用選考倍率低下にみられるような「教員離れ」に拍車をかけているのではないか。この窮地を打開するには、教員増の実現しか手だてはない。教員の増員をかたくなに拒み続ける財務省は、学校に対しても企業と同じ轍(てつ)を踏ませるつもりなのだろうか。

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