中高生のサプリメント依存 自分の健康を自分で保持する能力を

日本陸上競技連盟(陸連)は12月9日、高校駅伝の一部の強豪校で貧血治療用の鉄剤注射を不適切に使用している懸念があると明らかにした。陸連は血液検査結果の提出を義務付けるなど、対策強化に乗り出す意向を示している。

鉄剤注射については、これまでも成長期にある中学生や高校生が持久力向上の目的で日常的に摂取し、その結果体がだるくなるなどの報告があった。過剰摂取が続けば、肝臓や心臓、甲状腺が機能障害を起こす恐れがあると言われている。そこで陸連は、2016年4月に競技力向上を目的とした鉄剤注射の自粛などを訴える「アスリートの貧血対処7ヶ条」を発表し各方面に周知したが、今般、改めて指導者の認識と倫理感が問われる事態となった。

一連の騒ぎの中で気になったのは、最近の中高生のサプリメント事情である。注射(薬)と違いサプリメントは簡単に入手できる上に、学生でも購入できる価格帯のものが多く、常用する中高生は珍しくない。専門家によれば、サプリメントを摂取する中高生以下の割合は10~15%で、運動部活動に所属する生徒の方がそうでない生徒よりも多い傾向にあるという。種類は鉄、カルシウム、亜鉛を含むミネラル系が最も多く、次いでマルチビタミン、ビタミンBなどのビタミン類、ブルーベリー抽出物と続く。摂取する目的は「健康増進」「栄養補給」が主だが、運動部活動に所属する生徒の場合「体力や筋力をつける」割合が非常に高い。

こうした傾向を危惧する声がある。国立循環器病研究センターの老田章薬剤部長は、サプリメントの過剰摂取の危険性のほか、薬との併用による弊害を指摘する。薬とサプリメントを一緒にとることで病気が早く治ると思いがちだが、実は薬の効果に影響を及ぼすことがあり、副作用のような事例も報告されているという。市場には違法なサプリメントも出回っており、摂取に際しては十分な注意が必要だと警告している。

インターネットで何でも手に入れられる時代、情報の選択能力が未熟な中高生はどうすればよいのか。とはいえ、大人でもサプリメントに詳しい人はそう多くないため、家庭での指導だけでは十分といえない。

そこで注目したいのが「薬の教育」である。中学校や高校の保健体育科や特別活動、総合的な学習の時間などにおける健康指導の中で、薬やサプリメントについて取り扱うものだ。

以前より、製薬企業などで構成する「くすりの適正使用協議会」や日本薬剤師会と学校が連携・協力し、さまざまな地域で「くすり教育」を展開していることをどれくらいの教育関係者が知っているだろうか。両団体は、指導用教材の作成や薬剤師による出前授業など、生徒たちが薬やサプリメントを正しく服用するための活動を積極的に行っている。

新学習指導要領が重視する「社会に開かれた教育課程」の実現は、「よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創る」という理念を学校と社会が共有し、新しい時代に求められる資質・能力を連携・協力しながら育むことにある。自分の健康を自分で保持する能力も、育むべき能力の一つといえる。身近に存在する薬やサプリメントの適正な使用法を子供たちに正しく伝えることは、われわれ大人の責務であろう。今回の鉄剤注射の騒動を奇貨として、来年度の教育課程の編成に生かしてみてはどうだろうか。

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