教員のメンタルヘルス対策 労働安全衛生法に基づく方策が必要

厚労省が10月30日に発表した「過労死等防止対策白書」では、通常期における1日の実勤務時間を「10時間超12時間以下」と回答した教職員の割合が半数を超え、平均実勤務時間も11時間17分と法定労働時間を優に超える働きぶりが明らかになった。さらに、長時間勤務の多さを筆頭に、職場の人間関係や保護者・PTA等への対応など、8割超が業務に関連するストレスや悩みを抱えていることも分かった。いずれの結果も、教員がいかに過酷な状況の下で働いているかを改めて示すもので、心身の健康への影響も極めて大きいと考えられる。

特に「心の健康」への影響は深刻だ。文科省が実施した人事行政状況調査によると、2007年以降、精神疾患による病気休職者は5千人前後で推移してきている。16年度は全教職員の0.53%、188人に1人が心の病を理由に学校を離れている。職場への復帰には支援プログラムも用意されているが、復職できた者は4割にも満たず、そのまま離職するケースも少なくない。

教員が精神的に追い込まれる理由として、業務環境の過酷さに加え、「代わりがいない」「自分がやらなければ」という意識が多分に働いているように思われる。先述の白書でも、長時間勤務の理由を「自身が行わなければならない業務量が多い」と答えた割合が7割に上っている。

「行わなければならない」と考える仕事の中には、制度さえ整えば他の人間が代替できるものも含まれるかもしれないが、一般企業とは違い、「替えの効かない存在」である教員は、自らの許容量を超えて抱え込みがちだ。負担を軽減するため、「チーム学校」体制の構築が推奨されているが、余裕がない教員同士の連携は果たしてうまくいっているだろうか。さまざまな問題を抱えたまま日々の業務に忙殺され、誰にも相談できないままに心がむしばまれていく教員は少なくないのではないか。異変に気付いたときには職場を離れざるを得ない、そのような不幸なケースは防がねばならない。

当然、第一に進めるべきは長時間勤務の抑制など抜本的な働き方の見直しである。その上で、予防に重きを置いた教員のメンタルヘルス対策が必要となろう。

労働安全衛生法では労働者のメンタルヘルスの不調を未然に防ぐために、事業者が講ずべき措置を定めている。学校現場も例外ではなく、「事業者=学校」「労働者=教職員」なのだが、法に基づく体制整備は遅れている。例えば、50人以上の労働者がいる事業所には産業医の専任や年1回のストレスチェックを義務付けているが、小・中学校での整備率は8~9割にとどまっている。教員は「過労死の恐れがある重点業種」と位置付けられているのだから、規模にかかわらず整備を進めるべきだろう。

また、保護者・PTAへの対応や職場の人間関係をストレスと感じている教員が相談できる場所を用意することや、複数人で対応に当たる体制をつくることも重要である。

同時に、復職の意志がある休職者への支援の在り方も検討すべき課題である。一度距離を置いた職場に戻ることは並大抵ではない。異動を含めた配置の配慮や、業務負担の軽減などきめ細かいサポート体制を学校内外の連携で構築したり、支援プログラムの周知を進めたりする必要もあろう。

教員の「心の健康」に関して、これまで社会も、教員自身も自覚的であったとはいい難い。子供の指導に悪い影響をもたらさないようにする意味でも、早急な対策が求められる。

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