学校の当たり前を見直す 教育活動のエビデンス(1)学校でエビデンスが求められる理由

岐阜県養老町立養北小学校教諭 森 俊郎

私は少し変わったことをしている。それは「エビデンス」を使った教育の取り組みである。日本語で「科学的根拠」という意味を持つこのエビデンスを使って、授業づくりや働き方の見直し、校内研修の改善に取り組んでいる。

先日、これらの取り組みをまとめた書籍『学校の時間対効果を見直す! ―エビデンスで効果が上がる16の教育事例』(学事出版)を出版した。ありがたいことに、発売直後に重版が決まり、予想以上の反響を頂いた。

大きな反響の背景には、今の学校現場の厳しい状況がある。

まず、「多忙化」だ。言うまでもなく、今の学校はとても忙しい。毎日の授業から校務分掌、部活動、生徒指導など、教員が担っている仕事は多岐にわたる。先日発表された経済協力開発機構(OECD)のTALIS調査によれば、日本の教員の勤務時間は、参加国・地域の中で最も長かった。このような状況を改善するために業務の見直しを進める上で、エビデンスが役に立つ。

次に「情報過多」だ。今の時代、インターネットを介してさまざまなメディアから、たくさんの情報を簡単に手に入れられるようになった。ある教員は公開授業をすることになったとき、その単元の指導案をインターネットで調べ、あっという間に指導案、ワークシートを完成させた。便利な時代になった。

一方、手軽にたくさんの情報が入手できる分、その情報をうのみにしてよいかどうかは、受け手側が正しく見極める必要がある。結局、前述の教員がまねて作った指導案で行った授業は、やはりうまくいかなかった。たくさんの情報の中から正しい情報を見分ける視点こそ、エビデンスである。

最後に「多様化」もある。近年、これまで当たり前に行ってきた教育活動が通じない――という経験が増えていないだろうか。PTA活動や学校の規則、地域活動など、これまで当たり前のように続けられてきた教育活動に対して、「なぜやるのか」「必要はあるのか」と批判的な意味を込めて疑問を投げ掛けられることも多くなってきた。

その理由として、これまで説明しなくても共有できていたはずの価値観が通用しなくなっている、つまり、教育に対する価値観が多様になってきたことが挙げられる。

このような場合、学校や教員は、なぜその判断を下すのか関係者に説明を尽くし、理解を得なければならない。その際に必要となるのもまた、エビデンスなのである。


【プロフィール】
もり・としろう 岐阜県養老町立養北小学校教諭。ロンドン大学(IOE/ロンドン大学教育研究所)客員名誉研究員。エビデンスに基づく教育(EBE)研究会代表。1984年福島県生まれ、岐阜県育ち。広島大学大学院教育学研究科修了。『学校の時間対効果を見直す! ―エビデンスで効果が上がる16の教育事例』(学事出版)ほか、エビデンスに基づく教育に関する雑誌寄稿、論文多数。