学校の当たり前を見直す 教育活動のエビデンス(6) 「ICTの利活用」を見直す

岐阜県養老町立養北小学校教諭 森 俊郎

小規模なある小学校に、4月からタブレット端末や電子黒板が部分的に導入されるようになった。ICT機器に魅力を感じていたA教諭は、ICTを使った指導を全校に広めようと躍起になっていた。

同僚の中には「私にはよく分からないから」と消極的な者もいたが、以前からICTの活用を「これまでの教育の在り方を大きく変える特効薬になる」と感じていたA教諭は、そうした声を聞き流し、どうにか良さを分かってもらおうと、機器の種類や使い方を精力的に校内に発信していった。しかしA教諭の熱意とは裏腹に、同僚の反応は薄かった。

このように、全校で何か新しいことに挑戦しようとするとき、エビデンスが追い風になる。

ICT機器に関するエビデンスを検索してみると、「Education Endowment  Foundation(EEF)」に、ICT機器の教育効果について分析したものがあった※。

それによると▽ICT機器の活用によって「書く」「計算する」といった基礎基本的な学力の向上が期待できる▽一方で、単にICT機器を導入しただけで児童生徒の応用的な学力が大きく向上するわけではない▽ICT機器の導入は予算や労力を必要とし、その費用対効果は決して高くない▽導入の際には、その基本的な使い方から、授業での活用方法など応用的な使い方までを学ぶ教員研修やICT支援(員)が必要――とあった。

エビデンスを知ったA教諭は、早速、同僚がICT機器をどれだけ使いこなせるかを考え、校内に発信する方法を見直した。A教諭はこれまで、ICTによるメリットしか頭になかったが、他の同僚にとっては、想像以上に大変な労力を伴うことも考慮に入れる必要があると反省した。

そこで、A教諭はそれぞれの教師が目指す授業の在り方に耳を傾け、そこにICTがどのように役立つのか提案した。機器の使用を無理強いするのではなく、ICTの苦手な同僚とも一緒になって授業づくりに励んだ。そして年度末には、A教諭はICTの教育活動全般に関して皆から頼られる存在となっていた。

新しい指導法を校内に広げようとする取り組みは大切である。そのとき、個人的な思いや勘だけでなく、そのメリット・デメリットを知ることで、よりよい学校づくりにつなげていける。多くの人が関わる取り組みだからこそ、エビデンスを参考にして、そのメリット・デメリット、そして、メリットを最大化する方法、デメリットを最小化する方法を客観的に追求したい。それこそが、エビデンスに基づいて考えるということである。

※執筆に当たり、EEFの「Digital technology」を参考にした。

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