【連載】ESDの魅力 その5 「もみじアプローチ」を推進

横浜市立永田台小学校長 住田昌治

 

「ESDの大切さは分かる。でも授業や部活で入る隙間がない。これ以上新しいことを取り入れることは難しい」

「ESDと聞いて、どんなことを考えますか」という問いに中学校の校長先生が答えてくれた。前段はその通りであるが、後段は少し捉え方を変えてほしい。ESDは特別なこと、新しいこと、今までと違うことを増やすのではなく、今までやってきたことを止める、減らす、削ることだと捉えたい。なぜならば、これまでの教育活動を持続可能性の視点で見直し、再方向付けすることがESDだからである。

また、持続可能と聞くと、何でも続けなければならないと考える人もいる。持続可能にするために止めることや削ることも必要になる。これまでやってきた教育が決して間違っているのではないが、「各国で教育が発展すればするほど地球環境が痛めつけられているとすれば、その教育とは何なのか」(D. Orr教授、アメリカ・オーバリン大学)という指摘は首肯できる。

では、どのように見直し、再方向付けをしていけばいいのだろうか。大切な視点は、ESDは、学校の中だけで実践が終わるのではないということである。授業でやったことが、学校での生活の場面、家庭や地域社会にまで広がっていくことが魅力でもある。

pr20160922_04永田台小学校では、そのような広がりを「もみじアプローチ」と命名し、もみじが色付くように学校や地域が変わっていく様子をイメージした。具体的には7段階を指標として示した。急激な変化は、反発と軋轢を生む。時間的なつながり、空間的なつながりを意識しながら、ゆっくりと染み込ませていくことが肝要だ。その時、課題になるのが持続可能性のエッセンスだが、これは各学校または各個人が自ら定めることが望ましい。ちなみに、永田台小学校では、「ケア」がそのエッセンスとなっている。

まず、何をすればいいのか。教育活動を持続可能性の視点で見直してみようと決心することが大きな一歩となる。そうすると、内容や関わる人や事などのつながりが見えてくる。寛容・受容の心構えでつながりを大切にしていくことによって、そのつながりはどんどん広がっていく。決して排他的になってはいけない。おそらく、ほとんどの学校ではここからは一気に総合学習で取り組むESDまで進む。しかし、大半の学校が総合学習でESDをどのように扱うかに終始してしまい、ESDの本質に触れることなく教室内で完結してしまっている。

ここでも大きな一歩を踏み出さなければ「価値観や行動、ライフスタイル」の変容を通して持続可能な社会への変革は生まれない。もみじアプローチにおいて、教室での学びは、学校全体へと目が向けられ、家庭や地域へと広がっていく。一般的にいう連携とか交流ではない。地域の課題を学校が引き受けて、子供たちが地域と共に解決に向かうことによって、持続可能な未来の担い手としての自信と自覚を得ることができる。

イベントでのESD、教科でのESD、環境教育等でのESD、総合学習でのESD、もちろんその段階のESDもあるだろう。繰り返すが、そこで終わっては持続可能な社会の形成にはつながらない。もみじアプローチのどの段階に学校がいるのか見ながら、一つ一つカベを低くし、次のステップへの橋を架けていくことが肝要だ。

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