名教師の失敗学 失敗を隠さずに学び続けよう 

植草学園大学名誉教授 野口芳宏

 

それが教師として成長する道

50年以上の教職経験で数多くの失敗を経験してきたと語る植草学園大学の野口芳宏名誉教授。「誰にでも失敗はある」と、失敗を過度に恐れ過ぎないよう励ますが、同時に「失敗を隠したり人のせいにしたりしないで学び続けよう」と、謙虚な気持ちで学び続ける重要性を強調する。

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■予備実験の手抜き

同名誉教授は、豊かな教職経験を生かし、現在、多数の著書を出版したり、数多くの研究会を主宰したりしながら、教員の成長を励まし、見守っている。しかし、約50年前の駆け出し教員時代には、授業、学級経営共に多くの失敗を重ねたと苦笑する。

千葉県の公立小学校教員として教職のスタートを切ったときに、5年生理科の「空気の振動」実験で大失敗をしてしまった。実験は、まず、鈴を吊したピンチコック付きの丸底フラスコ内の水を沸騰させ、真空状態を作り出す。そのフラスコを振って鈴の音が聞こえないのを確認する流れ。

目標と展開の大枠だけをつかんで、「理屈は分かった」と少々高をくくり、予備実験をしないで授業に臨んでしまった。

実際の授業では、フラスコに水を入れ過ぎてしまい、時間内にとうとう沸騰せず、真空状態を作り出せないまま終わってしまう恥ずかしい授業になったと反省する。

基本中の基本である予備実験を疎かにした結果の大失敗。自分自身の軽率、傲慢さを後悔しながら、実際に痛い目に遭って初めて学んだと、大きな戒めになった点を強調する。

教職7年目。小学校1年生体育の授業での失敗も、印象いと深く振り返る。雨天で校庭が使えない中で、屋内で実施した「おんぶリレー」だ。児童がペアで互いをおぶりあって走り、順位を競う。児童の強い要望があり、楽しませてやりたいとの思いで、深く考えないまま行い、問題を引き起こした。

1年生は発達の特性上、頭が大きくて前に転びやすい。その上に長靴である。さらにコンクリートの上で授業を進めてしまった。夢中になった1人が硬い床の上で転倒。かなりの大けがだった。一歩間違えれば、大事になるところだった。このときも、教師としての安全意識や危機管理への考えが甘かったと猛反省した。

その他、児童が自由闊達に意見を交わす国語授業を目指したが、「教えるべき内容をしっかり教える」要素を欠いたため、全く無駄になった展開など、大汗をかいた失敗経験はたくさんあるという。

■人のせいにしないで失敗に学ぶ

同名誉教授は、たくさんの失敗を思い起こし、教職に就く者としての自覚や謙虚さの不足が共通していたと、問題点を強調する。

また失敗自体は誰にでもあるが、失敗を人のせいにしたり、隠したりしてはだめだと指摘する。

「失敗を反省してそこから学んでいくのが、教師として成長する道」と訴え、失敗を糧にするためには、問題点を分析し、自分自身を変える努力をしなくていけないと振り返る。

伸びる教師は、失敗に負けず、課題点を明らかにしながら、謙虚に学び続ける姿勢と行動力を持っている。失敗から誠実に学び、成長の礎を積み上げてほしいと願っている。