熱中症の予防を学ぶ 大塚製薬が公開講座

熱中症のメカニズムなどで講演する福田さん
熱中症のメカニズムなどで講演する福田さん

正しい理解でリスクを回避

東京都立小岩高校(山田温校長、生徒数1061人)で6月22日、熱中症予防の公開講座が行われた。全校生徒が参加した。講師を務めたのは、大塚製薬(株)の福田とも子さん。予防のために、熱中症のメカニズムや体と水分の関係について講演した。同社は、熱中症対策の啓発活動を積極的に推進している。

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■熱中症のしくみ

福田さんはまず、体温調節の仕組みを説明した。その上で、熱中症の4つの症状である熱失神、熱けいれん、熱疲労、熱射病について、具体的な症状を解説した。生徒らの理解を促す上で「ゆでたまご」を例に、「タンパク質が熱で変性するのは42度。これによってできたゆでたまごは、生たまごに戻せない。人体のタンパク質も同様で、体温が42度になると脳にダメージが出る。ヒトは、発汗して体温を調節している。この汗とともに、排尿や排便でも体外に水分が出ていく。体外に出て行った水分を補い、バランスを保つ必要がある。1日2.5リットルの水分補給が必要」と話した。

■水分補給の仕方

熱中症予防のための水分補給に関しては、熱中症になりやすい環境について、「8月の暑い日に2時間半、陸上競技の練習をした場合、どのくらいの汗をかくか」と身近な事例で問いかけた。この環境条件では2.7リットルもの汗をかくと話し、「運動競技によって発汗量が異なるため、それを考慮する必要性がある」と解説した。

体外に排出された水分を補う仕方については、「ただ水を飲めばよいわけではない。成人の体の60%は水分で、体液は水とナトリウムイオンなどでできている。その体液は、働きとして酸素や栄養物を運び、不要なものを体外に出し、体温の調節をする重要な役割を果たしている。だから、出ていった水分を補うためには、体液に近い成分を補給する点が大切」と述べた。

また補給した水分の体内吸収については、「きちんと吸収するには『ナトリウム』や『糖(ブドウ糖)』が必要。その際、必要なナトリウム量は水100ミリリットルあたり40~80ミリグラム。体(血管)への水分吸収スピードを速くし、回復を図るのには、糖が重要な役割を果たしている。水分補給時に、ただの水や茶だと体液の濃度が下がる。喉の渇きは一応収まるが、体液濃度(浸透圧のバランス)が回復していないので、脱水状態からは回復しない」と解説した。

■スポーツ活動時の熱中症予防5カ条

福田さんは、スポーツ活動時の熱中症予防に関して、(1)暑いときの無理な運動は事故のもと(2)急な暑さに要注意(3)失われる水と塩分を取り戻そう(4)薄着スタイルでさわやかに(5)体調不良は事故のもと――の5カ条をかかげ、予防のポイントを認識させた。加えて「熱中症予防で重要なのは、朝ごはんをしっかりと食べること」と強調した。

■熱中症になってしまったときの対処法

熱中症になってしまった場合の対処法については、「その人に3つの質問をする。『ここはどこですか』『お名前は』『今何をしていましたか』。それへの返答が適切でなかった場合には、救急車を呼ぶ。的を射た返答が得られたのなら、涼しく風通しの良い場所で休ませる。そして『水分補給ができますか?』と問いかける。できる場合には、ナトリウムイオンやカリウムイオンなどのイオンを含む水分を補給する。自力でできない場合は、病院で点滴を打つ。回復したとしても、その日は運動を避け、経過観察をする」

上昇した体温を下げるために体を冷やすポイントについては、「首、脇の下、股(股関節)。この3カ所には太い血管が通っている。ここを重点的に冷やすと、血液が冷える。冷えた血液が全身に回り、体温を下げる」と教えた。
部活動時の留意点としては、「熱中症の事故が多く起こるのは、高校1年生。1年生に起きやすいのは、もともとの体力が2~3年生より低いのに部活では同じ運動するからという理由がある。上級生に気兼ねをして、具合が悪くても我慢してしまう傾向もある。上級生には、『大丈夫か』と一声かける配慮をしてほしい。1年生には、我慢をせず、『具合が悪いので休ませてください』と、勇気をもって言ってほしい」と述べた。

■学校全体でリスクマネジメント

同校の山田校長は、「本校は部活動が盛んなだけに、顧問の先生たちの意識が高い。研修や情報交換を行い、デジタルの計器でWBGT指数の計測もしている。熱中症発症の可能性が高いと思われる環境下では、状況によって部活動を一端中断させる対応などもとっている。養護教諭も、プリントを作成して生徒に配り、注意を喚起している。きょうの講座は、生徒にとっても教職員にとっても、情報を共有する良い機会となった」と語った。
同講座については同社サイト(http://www.otsuka.co.jp/health_illness/academy/school/)に。

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