こども宅食が支援の届きにくい家庭の力に

わが国では子供の「7人に1人」が貧困状態にあるとされ、子供の貧困問題が深刻化している。特に課題とされるのが、子供たちに支援が届きにくい状況があるということだ。背景には、「生活苦を周囲に知られたくない」「誰に相談したらいいかわからない」「申請手続きが煩雑でわかりにくい」などさまざまな要因があるとされる。

こども宅食の活用について語る今井峻介氏

そこで、どうすれば子供たちに適切な支援が届くようになるか、認定NPO法人フローレンスのこども宅食事業部でマネージャーを務める今井峻介氏に聞いた。今井氏はこども宅食の活用が適切な支援の橋渡しになることを強調した。

子供の貧困対策大綱に欠けた視点は

政府は11月29日、「子供の貧困対策に関する大綱」を閣議決定した。通常国会で改正「子どもの貧困対策法」が成立したことを受け、5年ぶりに見直しとなった。大綱では、高校中退対策や、スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーの配置の充実化などが掲げられた。

中でも注目されたのは、基本方針に「支援が届いていない、又は届きにくい子供・家庭に配慮して対策を推進する」という文言が示された点である。

家庭が困窮状態にあるのを周囲に知られたくない、そもそも制度の存在自体を知らない、子育てや介護などで窓口に行くことが難しい、といった支援を受けることが難しい家庭は存在する。従来は、制度や相談窓口を充実させこれらの問題に対応してきたが、そういった家庭に対して能動的に支援する姿勢を見せた点は大きな前進と言える。

一方で、支援が届きにくい家庭にどうやってアプローチするのか、成果をどう評価するのか、というアウトリーチに関する具体的な施策や明確な指標は記されていない。今後は、この大綱をもとに自治体が貧困対策に関する計画を具体化していくことになるが、このままでは絵に描いた餅になりそうだ。

LINEで被支援家庭と適切につながる

子供や家族に関する社会問題の解決に取り組んでいる認定NPO法人フローレンスでは、経済的に厳しい状況にある子育て家庭に無料で食品を届け、リスクが発見された家庭を必要な支援につなげる「こども宅食」事業を東京都文京区で推進。並行して、全国展開を進めるために「一般社団法人こども宅食応援団」も設立している。

家庭への配送準備を進める

事業を通して今井氏は、「支援が届いていない、又は届きにくい子供・家庭」に対するアウトリーチの手段として、こども宅食に手応えを感じたという。文京区が実施しているこども宅食では、LINEやメールを活用し、窓口に行かなくても24時間いつでも申し込みが可能である。申し込み要請のあった家庭に約2カ月に一度食品を配送するが、その際に運送業者が各家庭と積極的にコミュニケーションをとり生活状況を把握するなど、やり取りを通じて家庭とのつながりを強化しているのだ。

行政や民間の福祉サービスを利用するとき、知人に見つかりたくない、書類をそろえられない、役所に行く暇がない、などの理由から申し込みを完了するまでのハードルが高く、支援につながらないという実態があった。申し込みにLINEを用いたため、誰かに見られる心配もなく、自宅にいながら申し込みでき、サービスの利用率向上に成功した。

さらに、LINEには利用者からの相談窓口としての機能もある。顔が見えない匿名性を生かし、気軽な相談を可能にしている。「今、何に困っているのか」といった現状の問題点のヒアリングから、「こういったサービスがある」との支援の実現につなげられており、アウトリーチとしての機能性の高さを実証している。

今井氏は「一見支援に見えないような形で、利用しやすい方法でアプローチすることで、利用を阻んでいたハードルが下がり、より必要なサービスが行き届きやすくなる」とこども宅食の利便性の高さがもたらすメリットを強調した。

ふるさと納税の返礼品は子供の笑顔で

今井氏はこども宅食の二つの課題について話す。現在、こども宅食の利用者とは食品の配送を通じて良好な関係を構築できているが、利用者と必要な支援を適切につなげていく方法については手探りの段階であるという。

もう一つの課題は、寄付金だ。こども宅食は現状の制度にはひも付かない、新しい事業であるため、使える補助金がない。現在配送されている食品については企業からの寄付金で賄っているが、配送や事業運営に関する人件費については、現在は「返礼品なしのふるさと納税」で事業費を賄っている。

「返礼品がないのではなく、『親子の笑顔』。こども宅食が広がっていけば、巡り巡って私たちの生活が豊かになる」と語気を強めた。こども宅食をめぐる環境のますますの充実が望まれる。

「ふるさと納税で寄付!こども宅食応援団」のサイトを見る