『博報堂流・対話型授業のつくり方』著者 大木浩士氏に聞く

博報堂の教育プログラム「H-CAMP(エッチキャンプ)」を立ち上げた同社H-CAMP企画推進リーダーの大木浩士氏が今年3月、博報堂のブレスト手法やファシリテーション技術などを、学校でも実践しやすいように分かりやすく解説した『博報堂流・対話型授業のつくり方』(東洋館出版社、1800円+税)を出版した。新型コロナウイルスの影響による長期休校で、学校再開後も難しい学級運営を迫られている。「こんな時だからこそ、生徒一人一人の思いに耳を傾け、丁寧な関係づくりをすることが大切」と語る著者に、本書の狙いなどを聞いた。


「粒ぞろいより、粒ちがい」で個性を育む
――本書を出版した狙いを教えてください。
『博報堂流・対話型授業のつくり方』
大木浩士 著
東洋館出版社
1800円+税

刊行のベースとなった教育プログラム「H-CAMP」は、2013年に会社の社会貢献活動の一環として立ち上げたものです。主な対象は中高生で、ワークショップ型の話し合い体験を通じて、生徒たちの個性を育み、発想する力を楽しく学び、自分らしく未来を切り開いていく人材づくりに貢献することが狙いです。H-CAMPには約7年間で、延べ600校、7000人以上の生徒が参加をしています。16年には、経済産業省主催の「キャリア教育アワード」で、経済産業大臣賞と大賞を受賞した活動でもあります。

私が「教育」に取り組もうと思った理由は、3つあります。1つは、博報堂は「これからの日本のため、青少年の教育に貢献したい」との思いを抱き創業された会社だということです。教育への思いは、今も会社のDNAとして受け継がれています。2つめは、仕事のノウハウ、特に課題解決のアイデアを生み出す手法を学ぶことが、生徒たちの将来に有益なのではないかと思ったからです。3つめは、「粒ぞろいより、粒ちがい」「チーム」という言葉が示す、人の個性の尊重と、異なる力の結集を重んじる博報堂の文化が、これからの人づくりで大切になると考えたからです。

新学習指導要領では「主体的・対話的で深い学びの実現」がうたわれています。これまでH-CAMPを通じて培ってきた多様なノウハウは、学校の授業づくりの参考になると考え、本書を刊行しました。

質の高い話し合いを実現する博報堂の技術
――具体的な内容をご紹介ください。

本書では、対話型授業(アクティブ・ラーニング)を進める際の、博報堂流のノウハウを数多く紹介しています。

具体的には、①基本となる心構え②雰囲気づくりのコツ③生徒の思いを引き出す技術④話し合いを活性化させる技術⑤深い学びを促すワーク事例⑥カリキュラムの進行例――の6つに焦点をあて、具体的な実践手法を解説しています。

博報堂には、質の高い話し合いを実現させるための多くの手法や技術があります。それをH-CAMPの授業の中で実践し、中高生でも通用するように加工し、練り上げてきました。数え切れないくらいの失敗と成功を重ね、磨いてきた技術があります。その全てを、本書で紹介しています。

大変な時だからこそ丁寧な対話を
――どんな人に読んで欲しいですか。
著者の大木浩士氏

「ファシリテーションの技術が知りたい方」「笑顔と活気のある対話型授業をつくりたい方」「生徒の本音を引き出すコツを知りたい方」などに、特に読んでいただきたいです。私は、ある県の教員研修の講師も務めています。教育委員会の皆さまにも読んでいただき、研修のヒントにしていただけたらと思います。

――読者へメッセージを。

休校が続き大変な時期ですが、だからこそ丁寧な人間関係づくり、笑顔のある楽しい授業づくりが求められると思います。休校期間中、孤独や不安を感じた生徒も、少なくないと思います。丁寧な対話を通し、それぞれの思いに耳を傾け、理解し合うコミュニケーションを図っていくことが大切だと思います。

本書で紹介しているノウハウやコツが、そうした関係づくりのヒントとなることを願っています。

※『博報堂流・対話型授業のつくり方』の「はじめにと目次」はこちらからご覧いただけます。
また、教育新聞では5月28日から、大木氏の連載「発想力を育む、話し合いの場づくり」全10回をスタートします。