『教育委員会が本気出したらスゴかった。』著者 佐藤明彦氏に聞く

オンライン授業の全市展開 実現までの道のり

佐藤明彦著
時事通信社
1600円+税

コロナ禍の休校期間中、双方向型のオンライン授業を全市展開して、注目を集めた熊本市。その道のりを追ったルポルタージュ『教育委員会が本気出したらスゴかった。』(時事通信社、1600円+税)が出版された。3年前までは、学校ICTの「後進自治体」だったという同市が、どのようにしてオンライン授業を実現したのか。本書を執筆した教育ジャーナリストの佐藤明彦氏に聞いた。

各自治体のモデルとなる取り組み
――出版に至るまでの経緯は。

休校期間中、多くの学校がプリント配付などで手いっぱいな中、熊本市がオンライン授業を全市展開しているとのニュースを耳にしました。個人的に関心を寄せていたところ、出版社から同市の取り組みを書籍化したいとの相談を受け、緊急事態宣言の解除を待って熊本へ飛びました。現地で関係者から話を聞き、約1カ月半という短期間で原稿を書き上げ、何とか9月末に出版にこぎ着けました。

――出版の狙いについて。

新型コロナに限らず、自然災害などによって、学校が臨時休業を余儀なくされることもあります。そうした場合でも、オンライン授業ができれば子供たちの学びを途切れさせずに済みます。その意味でも、熊本の取り組みを多くの関係者に知っていただくことの意義は大きいと考えています。

また、熊本市は日ごろの授業でも、積極的にICTを活用しています。今後、GIGAスクール構想で「1人1台」のデジタル端末が整備されていく中、同市のICTの活用実践、教員研修の在り方なども、他自治体のモデルとなる取り組みだと思います。

教委関係者の強い決意
――具体的な内容は。

第1章では、3月2日に休校に突入してから、4月15日にオンライン授業を実施するまでの45日間にスポットを当て、教育委員会の取り組みをドキュメンタリー的に紹介しています。また、第2章では、デジタル端末の整備において「政令指定都市で下から2番目」だった熊本市が、わずか3年間でどのように先進自治体になったのかを紹介しています。第3章では、4~5月に行われたオンライン授業の内容を紹介しています。第4章では、今後、学校ICTの「熊本市モデル」を普及させていく上での課題などをまとめています。

佐藤明彦氏

いずれの章でも、教育委員会関係者の並々ならぬ決意、熱い想いなどを感じ取っていただけることでしょう。デジタル端末の整備において、どのような基本方針を持つべきかについても、参考になる部分が多々あると思います。

端末整備を「本気」で進めてほしい
――どんな人に読んでほしいか。

一番は、教育委員会関係者です。熊本市を一つのモデルとして、端末の整備を「本気」で進めてほしいと思います。万が一、再び一斉休校となったら、その時はオンライン授業を実施できなかった自治体が批判を浴びるでしょう。

本書は専門書ではなくルポルタージュなので、「プロジェクトX」を観るような感覚で、読んでいただくこともできます。一般の方々にとっては、学校教育の最新事情を知っていただくこともできる一冊だと思います。


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