学校情報化をどうステップアップするか 教育の情報化実践セミナー

大阪市の先進的事例に学ぶ

学校情報化優良校らが発表

小中学校の実践事例などから学校情報化についての理解を深める第2回「教育の情報化実践セミナー(主催・日本教育工学協会〈JAET〉)が10月3日、オンラインで開催された。

2021年度の全日本教育工学研究協議会全国大会の開催予定地であり、学校情報化を積極的に進めている大阪市の学校情報化優良校や先進校ら4校が登場。大阪市立小中学校における取り組み事例が紹介されたほか、学校現場では今後どのようなステップで学校情報化を進めていけばよいかについての意見交換が行われた。

まず、20年度の学校情報化優良校に認定されている大阪市立菫中学校の事例が紹介された。

取り組みの中から「教科指導におけるICT活用の実践例」のポイントとして挙げられたのが、①授業用PC、プロジェクターを普通教室・特別教室共に設置②ケーブルは接続したままにする③通常はサインアウトした状態にしておき、パスワードを入力するだけですぐに授業で使えるようにする――など。

これらによって、授業前に10分ほどかかっていたPC利用のための準備時間がほぼゼロになり、各授業でのデジタル教科書(国・数・英)やパワーポイント(全教科)の利用が拡大したという。

3年生を対象とした、教員自作のパワーポイントを使用したオンライン授業の取り組みについても発表。これには約9割の生徒が自宅で授業を受講した(通信環境がない場合は学校で受講)。

生徒には「いつもより集中して授業を受けられた」とおおむね好評だったこともあり、発表者の山本努指導教諭は「新型コロナウイルスの第2波、第3波がきたとしても、授業を中断することなく、オンラインで授業を行っていけるという手応えを感じている」と成果を強調した。

続いて紹介されたのが、同じく今年度の学校情報化優良校に認定されている大阪市立城北小学校の事例。教科指導にICTを活用するとともに、校務の情報化にも注力している。

ネットワーク上で連絡事項の伝達などを行うことにより朝の職員連絡会を削減したり、必要な職員会議の議事録や資料をデータ化(ペーパーレス)したりすることで、校務全般が効率化され、教員一人一人の負担軽減につながったという。

情報化担当教員であり発表者の斉田俊平指導教諭は「校務の効率化を行うと同時に教員のICT活用指導力を高めるための校内研修や情報共有の場を設けており、管理職や情報担当教員だけでなく、学校全体の情報化の普及・定着を目指している」と取り組みの基幹に触れた。

組織的取り組みの重要性を指摘

セミナーの後半では、「学校情報化の充実と全国大会に向けてのステップアップ」と題し現場の事例をもとに現状を交えながら今後取り組むべき実践のポイントについてのヒントを探るディスカッションが行われた。

すでに1人1台のタブレット端末支給が進んでいる大阪市立昭和中学校の笠置芳章主務教諭は「完全に生徒の学習ツールの一つとして浸透したことが大きい。教育用SNSなども利用しているが、生徒の情報モラルが高まってきたこともありトラブルの心配はしていない」と述べた。

大阪市立堀江小学校宮本純首席は、同校の現状を「本校にはICTのスペシャリストはおらず、ICT活用推進校になって8年目となるが、教員の85%が入れ替わっている。それでも継続してこられたのは、ICTプロジェクトチームの存在が大きい」と分析。

「新しく赴任した教員も短時間でスキルを習得できる校内研修を軸としたサポート体制が整っていて、それぞれが持つICTスキルを積極的に共有する意識が教員の中に根付いている」と組織的な取り組みの重要性を語った。

セミナーを締めくくり、JAET常任理事の豊田充崇和歌山大学教授は閉会あいさつで「これまで学校情報化は小回りの利く小さな自治体の方が環境整備が進みやすいと言われてきたが、この定説を打ち破る取り組みを大阪市が行い、成果を出し始めている。個々の学習課題やスタイルが重視される時代において、JAETとしては実践者と企業をつなぎ、学校情報化をさらに推進する役割の重要性を再認識している」とまとめた。