『非正規教員の研究』 著者の佐藤明彦氏に聞く

 公立学校では年々、教員不足の問題が深刻化しているが、その原因の一つに非正規教員の増加があると言われている。教員採用試験がまだ定員割れを起こしていない中で、なぜ教員不足が起こるのか。そして、非正規率の増加がなぜ、教員不足につながるのか。こうした疑問を解き明かすべく『非正規教員の研究:「使い捨てられる教師たち」の知られざる実態』を上梓した教育ジャーナリストの佐藤明彦氏に、教員の雇用・労働環境を巡って何が起きているのかを聞いた。

教員不足の構造的問題を広く知ってもらいたい

――出版に至るまでの経緯は。

『非正規教員の研究:「使い捨てられる教師たち」の知られざる実態』(時事通信出版局)

 ここ数年、公立学校では教員不足が大きな問題となっています。でも、疑問に思わないでしょうか。教員採用試験はまだ、どの自治体も定員割れを起こしてはいません。それなのになぜ、教員が足りなくなるのか。ここを掘り下げていくと、実はどの自治体も教員全体の1~2割を非正規教員が占めていて、そこで抜けた穴を同じく非正規教員で埋めようとしているが故に、教員不足が起きていることが分かります。

 ならば、正規教員の割合を増やせばいいのですが、どの自治体もそうはしていません。問題をさらに掘り下げていくと、どの自治体も非正規教員に頼らざるを得ない事情を抱えていることが分かります。本書では、そうした構造的問題を広く知っていただくことを目的として出版に至りました。

問題を「三位一体改革」までさかのぼりながら分析

――具体的な内容は。

 第1章では、非正規教員の人たちがどんな立場で、どんな仕事をしているのか、取材を通じてそのリアルな姿を描きました。読んでいただければ、非正規教員に対するイメージが少なからず変わると思います。

 第2章では、実際にどのくらい非正規教員が増えているのか、「ゆとりある教育を求め全国の教育条件を調べる会」の調査データを引用させていただく形で解説しています。

 第3章では、非正規教員の増加がなぜ教員不足を招くのか、とある自治体の教員需給をシミュレートする形で明らかにしています。

 第4章では、なぜどの自治体も非正規教員を増やし続けてきたのか、小泉内閣による「三位一体改革」までさかのぼりながら、現状を分析しています。

 そして第5章では、1~4章を踏まえ、どうすれば状況が改善に向かうか、具体的な政策提言をしています。

公立学校の危うい状況を多くの人に知ってほしい

――どんな人に読んでほしいか。

 一番読んでほしいのは、教育に関心のある一般の方々です。公立学校がこれだけ危うい状況にあるということを、一人でも多くの人たちに知ってもらいたいとの思いがあります。もちろん、学校関係者の方々にも、自分たちの雇用・労働環境がどのように崩れてきたのかを知ってもらいたいと思います。

 最後にこれだけは言っておきたいのですが、この問題は国や教育委員会を悪者にして済む話ではありません。大切なのは、現状を正確に把握し、何をどう変えれば状況が改善に向かうのか、膝を突き合わせて考えることです。本書が、そのきっかけになることを願っています。

あなたへのお薦め

 
特集