(円卓)小数あれこれ

遠山真学塾主宰 小笠毅

 

小数は小学校3年生で、はじめて学習する数です。例えば東京書籍版では「はしたの大きさを表してみよう」と紹介され、dlのマスとともに水のかさを測り、出てきたはしたを何dlですか、とたずねるところから始まります。(ちなみに分数は小学校2年生で出てきます)

タイトルの「小数」の読み方には、かながふられていません。「はした」とか「かさ」という珍しい単語も定義されていません。小学校3年生の子どもたちに理解できるのでしょうか。

私のように、小さいときを田舎の学校で過ごした者は、「はしたない」と言われたことはありましたが、「はした」という言い方を耳にしたことはありません。

周知のように、日本では江戸時代初期の『塵劫記』(吉田光由著)に「小数(こかず)」として、当時の市井の生活と商業、理系文化を支える大切な数字のひとつでした。この伝統は、いまなお「割・分・厘・毛」などの言葉の中に根付いています。

しかしながら最近では、宇宙物理学や天文学、電子工学、医学、生物学、原子物理学などのミクロの世界を表す小さな数字が必要になり、小数は「小数点以下第3位まで」などと、昔のようにのんきなことが言えなくなってきました。

例えば「ニュートリノ」を考えるとき、プランク時間を表す小数は、10のマイナス43乗。小数点の後ろに「0が42個と1秒」という表示がされるのです。

それだけにいつまでも「はした」の数を表すといった小数の考え方は、古いのではないでしょうか。小数の表示の仕方も「0・5」とか「3・14」のような表記だけでなく「10のマイナス何乗」といった形のものを、できれば小学生のころからなじませておくことが必要かもしれません。

もちろん子どもたちのアタマが、社会の急速な進歩に対応して、成長するわけではありません。「はじめに数あり。数は人とともにあり」と考えて、「10のマイナス6乗=マイクロ」や「10のマイナス9乗=ナノ」「10のマイナス12乗=ピコ」なども、「デシ」「センチ」「ミリ」などと同じように、新しい常識にするよう教えてみてはどうでしょう。

「教えるとは、ともに希望を語ること」(ルイ・アラゴン)。小数から未来が見えてきます。

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