(円卓)子どもに観てほしい

ドキュメンタリー映画監督 伊勢真一

認知症というと「何も分からなくなってしまったお年寄りの病気…」と思っている方は多いのではないだろうか。実は私も、そんなふうに思い込んでいたひとりだった。

友人の奥さんが、若年性の認知症だと分かったのは10年ほど前。その友人夫妻に「頑張れ!」とエールを送るつもりで創ったドキュメンタリー映画『妻の病―レビー小体型認知症―』を製作した。また札幌にある認知症施設を2年間にわたって記録した『ゆめのほとり―認知症グループホーム福寿荘―』も完成させた。今では「認知症の人は何も分からないのではない。本人なりの思いや願い、できる力を秘めている人だ」と、キッパリ言いきれるようになった。

2本の映画はヒューマンドキュメンタリーだ。認知症の教育映画ではない。認知症を生きる一人ひとりが、病気を抱えながら、家庭で、グループホームで、生き生きと暮らしているそのままの姿を記録したものだ。いつもの作品にまして反響が大きく、作品を観た多くの人が感想を寄せてくれる。

「認知症であっても、相手の心を読み取る力があり、一人ひとり強い思いが心の中にひそんでいる。それを近くにいる人が認める大切さを教えられました」「病というのは、関わる人間に、生きる上で最も大切なことは何かを教えてくれるものですね」「病気ではなく、一人ひとりの個性としてとらえることが大切なのだと改めて感じました」

認知症を描いた2本の映画は、劇場公開だけでなく、全国各地での自主上映も行われている。上映の会場に出向くと、多くが満員御礼。観客は圧倒的にシニア層が多い。それぞれが他人事でなく、自分のこととして、認知症のテーマを受け止めているのだ。

上映後のトークの最後に、私はいつも「この映画を、若い人たちにぜひ観てもらいたい。小学生や中学生や高校生に…」と言う。若い世代が認知症への関心を持ち、その存在に目を向ければ、地域で見守る意識が高まると思うからだ。学校での上映が実現すれば、ベストだと思う。

「妻の病」「ゆめのほとり」。この2本の認知症の映画を、子どもたち、若者たちに観てもらう自主上映活動に、力を貸していただきたい。ぜひ!!