(円卓)協同学習のディベート

南山大学教授 石田裕久

 

近年、議論する力を身に付けさせるための教室ディベートが盛んになっています。そこでは、ものごとを正確に分析するとともに、状況に合わせて適切に判断し、自らの主張を論理的に構成する能力を涵養することが目指されています。

小学校高学年の、ある国語の教科書には「インスタント食品を積極的に取り入れるべきか否か」という論題でディベートを行う単元が載っています。

こうした教室ディベートは、通常、特定のトピック(事実論題、価値論題、政策論題)に対して、無作為に肯定と否定の側に分かれて、一定のルールのもとに同じ持ち時間で立論・質疑・反駁を行います。

相手や聴衆を説得する技術を競い合った後、第三者のジャッジが勝敗を決定する、といった手順で進められます。

ディベートは、詭弁や筋の通らない議論に反論し、正しい結論を導く力を身に付けるのが目的であるとはいうものの、結果的にはクラスを勝者と敗者に分けて終わることになります。

これに対して協同学習のディベート技法である「双方の言い分(建設的討論法)」は、ちょっと面白い結末のつけ方をします。

ある論題について賛成派と反対派に分かれて主張・質疑・反論するところまでは通常のディベートと同じです。その後、賛成派・反対派は立場を逆転させます。

つまり賛成派だった人が反対派となり、反対派は賛成派となって、再度、主張と反論を繰り返します。こうして、賛成と反対の両方の立場を経験した上で、最後に両者が一緒になって、立場が違っても互いが許せる範囲で妥協をして、全員が納得できる折衷案を作成するのです。

私たちの周りには、互いに相反する論題が数多く存在しますが、一方の立場が100パーセント正しく、他方が100パーセント誤りであるということはほとんどありません。

それぞれが何分かずつの理をもっている場合が大部分です。

であるとするならば、私たちは双方の立場を互いに尊重しつつ、どうしたら全員が納得してそれにしたがうことのできるような妥協案を見いだせるか、知恵を出し合って考えることが大切なのではないでしょうか。

「双方の言い分」は、そうした考え方から生まれた討論法の一つなのです。

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