(円卓)生きる力世代への期待

早稲田大学教職大学院客員教授 細谷美明

平成28年の年が明け、次期学習指導要領の改訂に向けた動きも中教審を中心に具体的な検討が本格化する。

すでに、平成26年11月に、文部科学大臣から中教審に出された諮問文「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について」の中で、その方向性を見ることはできるが、学校の教育課程を支える条件整備も、そのほかの各種諮問文あるいは最近提示されている各種答申案などで、ある程度の概要を知ることができる。

私が着目するのは、これらの諮問文あるいは答申案に登場するキーワード「アクティブ・ラーニング」である。

前述の諮問文以外の各種答申案の中にも記載され、特に教員研修や教員養成の際に、主催者側が教員あるいは学生に対して行う研修や講義の中にも導入すべきものとして提示されているのである。

この背景の1つには、2012年に行われた「OECD生徒の学習到達度調査(PISA)」(PISA2012)がある。この調査で日本は、学力面において世界トップレベルに「復帰」したが、このときOECD側から日本の教員に対して出された意見の1つが「アクティブ・ラーニングと知識量のバランス、習得すべき主要な概念・知識と、それ以外の事実的知識を構造的に捉える必要がある」であった。

この根底には、わが国の教員の中に、アクティブ・ラーニング型指導に苦手意識をもつ者がかなり存在するという事実がある。

その意味で、国が今後の教員養成・育成を含めた学校教育改善の視点の1つに「アクティブ・ラーニング」を入れたことは、これからのグローバル社会への対応も視野に入れれば、当然のことであろう。

ところで、PISA2012の結果を受け、当時一部のマスコミは「ゆとり教育の敗北」などと報道していた。その「ゆとり世代」である現在の大学生を私は教えているが、教育実習での授業や模擬授業などを見る限り、授業の中にアクティブ・ラーニングをスムーズに取り入れている者を多く見かける。

これは、「総合的な学習の時間」で主体的な学びを経験してきた影響であると、私は考えている。まさに彼らは「『生きる力』世代」の第1期生なのである。将来の日本の教育界に大いに期待をもとうではないか。

(元全日中会長)

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