(円卓)伝える

岡山市教育研究研修センター所長 中島陽子

 

「不器用ですから……」。映画俳優の故高倉健さんの名セリフである。ぼくとつで寡黙な渋みの際立つ職人技の演技。後進の学ぶところ大である。

これまで教職という「職人技」も、このように代々伝えられ受け継がれてきたように思う。職場には学ぶべき憧れの先輩がいて、生徒指導や学級経営、教科指導等の名人技をどうしたら盗むことができるのか、先輩たちの後ろ姿を通して学んできた。

時は今、大量退職の時代。新たな教職員が数多く採用され、これまでベテラン層の技を伝えていたミドル層との世代間の人数の不均衡が生じている。ベテランの先生方はどのようにしてその技を後輩に伝えていこうとしているのだろうか。そもそも、先輩の後ろ姿から学ぶなんてことが、今の若い教職員に通じるのだろうか。

教育界における時間の進み方は、これまでに比してますます加速化されている。「将来の変化を予測することが困難な時代」を生きる子どもたちへの教育を担う学校の教職員として、新たな学校文化の形成が求められている。

昨年12月に行われた中教審で、「これからの学校教育を担う教職員やチームとしての学校の在り方」が議題にあげられた。そこには「教員は学校で育つ」ものであり、「同僚の教員とともに支え合いながらOJTを通じて日常的に学び合う校内研修の充実や、自ら課題をもって自律的自主的に行う研修に対する支援のための方策を講じる」とある。

岡山市でもすでに実施している、経験年数の異なる教員同士のチーム研修やベテラン層やミドル層の教職員がメンターとして若手教職員を育成するメンター方式の研修など、教職員が学ぶための仕組み作りや、教職員が自ら学び続けるモチベーションを維持できる環境整備が必要とされている。

世代交代が一気に進むことが確実なこれから数年のうちに、次の新しい教育を担う若手の教職員に、その技や教育への思いをいかに「意識して伝えていく」か。高倉健さんにも負けない、人柄がにじみ出るような円熟した技の伝承、不器用であっても子どもたちとひたむきに向き合ってきた教育者としての熱い思いを次の世代に確実に「伝える」作業が不可欠である。

「教えるプロ」である先生方には必ずできると信じている。

関連記事