(円卓)言葉の力を付ける

帝京大学教育学部教授 劔持勉

 

常用漢字改定で196字が追加されたとき、小学校での活用や使用が話題となった。そこに、都道府県名に用いる漢字が含まれているのに驚かされた。

改定告示の時期に、小6と中3がどの程度読めるか(達成率)を調査した。その際、生活に近い言葉と合わせて学びの習慣や地域性を加味し、検討を加えた。鹿、熊、媛、剛、阪、梨、埼、茨などの県名に対する達成率は8割を超え、挨、拶などの語句も高い達成率を残した。

学年別配当漢宇が見直される際に、学習負担の問題が指摘された。指導すべき漢字が1字増えても、教える側は負担を感じるようである。しかし、日常生活のなかで使っている言葉は、学年別配当漢字に含まれていなくとも読んで書ける必要がある。「習っていない字は書けなくてよい」「学年で習うまで読めなくてよい」という教師集団の意識を立て直す契機になるのを期待したい。

一方、平成元年度版学習指導要領国語編で示されている1学年上の漢字をふりがな付きで指導できるようになり27年が経つ。だが、依然として学校現場では前述のように、学年で指導するまで書けなくてよい、読めなくてよいとの側面が強い。

私は校長時代に、学校経営の方針で「言葉の力を付ける」ために1学年上で習う漢字をふりがなをつけて指導するのを、次のように徹底した。

(1)第1学年の時間割はひらがなの時間割と漢字の時間割(ふりがな付き)を活用し、教科の言葉の習熟を考えて定着を図った。
 (2)第1学年から1学年上の配当漢字で構成される熟語一覧を作成して、言葉の力を高めた。
 (3)第5・6学年では中学校で習う常用漢字を含め厳選200語を読めることに重点をあてた実践を図った。

「言葉のカ」の第一歩として、身近な日常生活に関わる言葉は読めてよいという意識に変えることができた。町を走るバスの「○○循環」を読めない子どもはいなくなった。駅前に多い「○○寿し」を読めない子どももいなくなった。

現在、中教審の議論が進み、各ワーキンググループでの討議を経て、教科ごとの審議に入っていく時期になる。学年別配当漢字の見直しの議論が最終的に展開される際には、身近な生活レベルに根ざし、児童生徒の側に立ったものになることを期待する。

関連記事